トヨタ・スープラ ①【思い出の車列伝】
- info-am
- 4 日前
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時代に翻弄されつつも
記憶に残る車
●トヨタ・スープラ
国内で売れることから距離をおいたような、
独特の哲学を醸し出すトヨタ・スープラ。
テリー伊藤さんにとっては、
そんな異次元ともいえる存在感こそが、
たまらない魅力だといいます。
Interviewer: Koichiro Okamoto (Motor Joumalist)
Photographs: Katsuaki Tanaka
スープラ買おうという人は
ピュアな〝愛〟が感じられる

意外に思うかもしれないけど、現時点で買えるトヨタの現行モデルの中で一番好きなのが実はスープラなんだ。
なんでかって? それはデザインや走りがいいというのもあるけど、なんだか独特の存在感に引かれるからだよ。
トヨタ車なのにちゃんとマーケティングしたように思えないところがいい。ヤリスやシエンタからランクルやアルファードまで、今のトヨタ車は周到なマーケティングの下に生まれて、そのとおり売れている。
ところがスープラだけは別世界だ。日本で売れることなんてあまり大事にしていない。その潔さがいいんだよ。まさに一匹狼だよね。
現状に満足しているような人は買わないし、シアワセの匂いがしないし、お客さんに寄り添っていない。でもそこがスープラの持ち味だと思うんだよ。
それに、80型が終わって現行モデルが出るまでにかなり時間が空いたよね。でもこうして出してきたこと自体がすごいよ。中身が実はBMWと同じとかMTが選べないとか、それは僕にとってはどうでもいい。
デザインもいい。スープラにしかない独特の味わいがある。屋根にふたつの山があるバブルヘッドだって際立っているよね。
売れてないから街で見かけないし、雑誌で特集されることもない。アリーナではお客さんが集まらなくても、高円寺とか阿佐ヶ谷あたりのライブハウスでは一部のお客さんから絶賛されている、売れないけど実力があるミュージシャンみたいだ。
GT-Rが欲しいという人は、なんだか投機的なにおいがプンプンするけど、スープラを買いたいという人のほうがよっぽどピュアな〝愛〟を感じる。ええっ、スープラ買ったの!? って英雄視されるだろうね。
引き立て役のスープラが
映画に出てカルト的人気に
スープラの歴史は、セリカXX時代まで含めるとけっこう長い。初代はこれがセリカ!? という感じの豪華な雰囲気で、いま思うとシトロエンのC6とか現代のDS9とか、そっち系のノリだよね。
2代目XXと初代70型スープラでは一転して、革ジャンが似合いそうな男臭い感じのクルマになって、スープラと名乗るようになってからはセリカとは全く別のクルマになった。
この頃にはソアラというデートカーの王者が傍らにいて、シルビアやプレリュードもある中で、スープラは我が道を歩んでいて、ちょっと危険な薫りをただよわせていたよね。
もちろんスープラが好きという女の子もいただろうけど、どちらかというと女性ウケはあまりよろしくなかったかな。
やがて2代目80型スープラが、「ザ・スポーツ・オブ・トヨタ」とか言って出てきたんだけど、ますます女性ウケしないクルマになった。
スポーツカーとしても、その頃はGT-RやZやNSXやRX-7がもてはやされて、スープラは引き立て役になっていた。三菱GTOともどもね。
実はその頃、ちょっとすれた感じの女の子と付き合っていて、あるとき「今日はクルマで行く」といって乗ってきたのが80型スープラだったんだ。それまで愛車が何なのか聞いてなかったからビックリしたよ。
まあ、直接そのコには言わなかったんだけど、そうか、やっぱり陰のあるコはこういうクルマを選ぶんだなと思ったものだよ。
そんなスープラにいきなりモテ期が来たのは、『ワイルドスピード』だ。あの映画に出たおかげでバーンと価値が一気に高まった。日本よりもアメリカですごいことになってる。それにつられてか、価値が見直されてか、歴代スープラの中古車相場も上がったよね。
僕は昔のスープラもいいけど、現行モデルが本気で欲しい! ついに生産終了が発表されたのは残念だけど、欲しいのは直6を積んでるほうのイエローの2~3万㎞ぐらいの中古車だ。調べてみるとけっこう高いけど、絶版車になって爆上がりする前に買っておきたい。本当に、トヨタ車の中で一番好きだよ!
歴代スープラをご紹介!
トヨタ・スープラの変遷
「セリカXX」を北米では「スープラ」として販売
●初代セリカXX A40/50型
(1978年~1981年)

北米で大成功を収めたフェアレディZに対抗すべく、セリカの上位モデルとして開発。直6エンジンの搭載をはじめ、充実した装備や高級感のある仕立てが特徴。そのコンセプトはどちらかというとソアラに受け継がれた。
●2代目セリカXX A60型
(1981年~1986年)

直線基調のデザインやリトラクタブルヘッドライトを採用し、スポーティー路線に転向。走りの開発にはロータスが関与している。装備も充実しており、当時としては最先端のクルーズナビコンの設定が話題となった。
●国内初代 A70型
(1986年~1993年)

セリカから独立し、日本向けも海外と同じ「スープラ」に改名。5ナンバーと3ナンバーボディがあり、強力なターボエンジンが与えられた。限定500台のグループAレースホモロゲモデル「ターボA」が印象的。
●国内2代目 A80型
(1993年~2002年)

曲線多用のグラマラスなボディに一新。エンジンは3L直6のターボと自然吸気となり、国産乗用車初の6速MTを搭載。ヤマハとの共同開発による相互連携アブソーバーシステム「REAS」も設定された。
●国内3代目 DB型
(2019年~2025年)

17年ぶりに復活。「GR」初の専売車種となる。内容的にはBMW Z4との共通性が高く、歴代初の2シーターであり、初めて直4エンジンが設定された。当初は8速ATのみで、2023年にRZグレードに6速M追加。
オークマン2025年12月号掲載記事








