スズキ スペーシア②【思い出の車列伝】
- info-am
- 2024年10月25日
- 読了時間: 5分
更新日:1月10日

地道な努力の積み重ね
ハイトワゴンの新定番
●スズキ スペーシア
N-BOX、タントの牙城に斬り込み、ついにトップに立った、スペーシア。
軽量化と電動化を地道に磨いてきたこのハイトワゴンの魅力に迫ります。
Text : Koichiro Okamoto(Motor Journalist)
後塵(こうじん)を拝していたライバルに追い付き追い越した
概ね全高が1.7mを超えたクルマを指す「スーパーハイトワゴン」という呼称は現在でも
使われているが、それが一般的になったせいか、最近ではもう少し車高が低いワゴンR等のクラスをひっくるめて「ハイトワゴン」と呼ぶようになってきた。30年あまり前にワゴンRの出現によりハイトワゴン一色となった軽自動車界は、その10年後の2003年にさらに車高を高くしたタントが登場すると、主流はスーパーハイトワゴンへと傾いていった。
やがて2011年にホンダが送り込んだN-BOXにより勢力図は大きく書き換えられ、現在もその状況が続いている。
スズキはN-BOXよりもずっと早い2008年にスペーシアの前身となるパレットを発売していたものの、販売的にはあまりパッとしなかった。
実は件(くだん)のパレットは、現在では常識となっている両側スライドドアをこのカテゴリーで最初に採用したクルマである点で特筆できる。低床プラットフォームや後席ダイブダウンシートによる利便性の高さも光った。
それでも販売が伸び悩んだのは、パレットが登場した頃はまだ車高がそれほど高くない旧来の意味でのハイトワゴンの人気が根強く、とくにスズキにはワゴンRという大定番が存在したので、なかなかパレットに目が向きにくかったからだろう。
その後、パレットは2013年にモデルチェンジしてスペーシアに改名したことには驚かされたものだが、車名の通り見るからに車内が広そうなフォルムとされた。それでも販売的にはだいぶN-BOXとタントに水をあけられていた。
ところが、2017年に登場した2代目は、N-BOXとの差こそなかなか縮まらなかったものの、時折タントをしのぐ売れ行きを見せるようになり、それまでの2強から3強の時代に突入した。「ギア」や「ベース」といった新たな個性が加わったのも2代目だ。
さらに、2023年末に3代目に進化したスペーシアは、直前にモデルチェンジした王者
N-BOXと当初は販売台数にだいぶ差があったが徐々に差を詰め、今年5月ついに逆転した。
軽量化と電動化に注力し クラストップの燃費を達成
軽ハイトワゴンなのだから「広くて便利」なのは当たり前として、スペーシアにはライバ
ルに対していくつか特徴がある。それは軽量化とマイルドハイブリッドと、それによるクラ
ストップの低燃費だ。
軽量化については、いったいどうすればそんなことができるのかと思わずにはいられないほどで、同じような形状の車体で剛性や安全性を確保して十分な装備を与えながらも、ライバルに比べてだいぶ軽くなっている。
マイルドハイブリッドについてもかねてから積極的に導入して燃費の向上を図ってきた。初代で採用した「エネチャージ」では、回生により蓄電した電力を補機類に供給していた。
ほどなく駆動までモーターアシストするように進化したことで、エンジンへの負荷を下げて燃費を向上するとともに軽やかな加速フィールを実現した。
一方で、あらかじめ蓄冷することでアイドリングストップ中でも冷房が効く「エコクール」の採用や、一時は最大10秒間のEVクリープ走行を実現するなど、独自の着眼点で他メーカーがやらないことにもトライした。
また、かつてはやや見劣りする感のあった先進運転支援装備についても、3代目ではミリ波レーダーと単眼カメラを組み合わせた衝突被害軽減ブレーキをスズキ車として初めて採用し全車に標準装備するなど、ライバルに追い付き追い越した。
頑丈で大容量のコンテナをモチーフとしたというデザインも評判がよい。とくにカスタム系は押し出しの強さでライバルを上回っていることも人気の要因となっているに違いない。
モータージャーナリストの視点!
中古車として流通しているのは2017年以降の2代目が圧倒的に多い。3代目が出たことで相場がだいぶ下がったものの、人気のカスタムは下がり幅が小さい。新車が売れた「ギア」は流通台数が豊富なのに対し、やや特殊な位置付けの「ベース」はかなり少なめ。3代目にも「ギア」が設定されたので、乗り換えによる新しい動きがありそうだ。全体的には年式や程度相応ながら、人気の軽ハイトワゴンゆえに下限はそれほど安くなく、15年以上が経過したパレットでも一定の相場を維持している。
各世代のウリはここだ!
初代(2013年~18年)

ネーミングの通り広々とした車内
● 副変速機付CVTを継続採用
●「エコクール」を搭載
● クラストップの低燃費
広い室内空間が魅力のスーパーハイト軽ワゴンとして登場。後席は左右それぞれでスライドが可能で、アイドリングストップ中でも冷風を車内に送る「エコクール」機能も搭載されている。

中古車小売り価格帯 35万円~130万円 |
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2代目(2017年~23年)
バリエーションを拡大

● EV走行できるマイルドハイブリッド
● 新プラットフォーム「ハーテクト」
● 「ギア」、「ベース」を追加
屈曲した骨格を最短距離で滑らかにつなぐことで、合理的かつシンプルな形状に。また、結合する強い部分を部品の固定に利用し、補強部品を削減。「ハーテクト」はボディー剛性を向上させながら軽量化を実現した。

中古車小売り価格帯 50万円~220万円 |
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3代目(2023年~)

もっと自由に、もっと使いやすく進化
● コンテナをモチーフとしたデザイン
● スズキ軽初の快適~安全装備が多数
● 後席のマルチユースフラップ
マルチユースフラップは、膝裏のサポート性を高める「レッグサポート」、脚を伸ばしやすくする「オットマン」、荷物の転落を防ぐ「荷物ストッパー」という、計3種類のモードを実装している。

中古車小売り価格帯 120万円~230万円 |
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オークマン2024年11月号掲載








