ポルシェ 911②【思い出の車列伝】
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- 2024年12月24日
- 読了時間: 5分
更新日:1月10日

“走り”に徹する世界
屈指のスポーツカー
●ポルシェ 911
いつの時代も“走り”にこだわる、911。
ポルシェの動向をウオッチすることは職業柄外せない、
というモータージャーナリストが911を語ります。
Text : Koichiro Okamoto(Motor Journalist)
日本での販売比率は約25%
人気の最大の要因は〝走り〟
ポルシェ全体の2023年の世界販売台数は、前年比3・3%増の32万221台となり、うち911は大幅な同24・1%増の5万146台に達した。
BEVのタイカンが登場した翌年の21年には、911をしのぐ売れ行きを見せて業界を驚かせたものだが、やはり911には根強い支持層がいて、ポルシェの象徴的な存在であり続けていることを改めて思い知る。
911の日本での正確な販売台数は未公表。しかしグローバルでの911の販売比率は12%程度で推移し、日本ではずっと倍の約25%を占めている。23年には年間販売台数がついに8002台に達したので、その数は推して知るべしである。
そんな世界を代表するスポーツカーであるポルシェ911が誕生したのは、1964年のことだ。当初から水平対向6気筒エンジンをリアに搭載した2+2レイアウトをはじめ、誰もがイメージする印象的なヘッドライトやファストバックのフォルムなども、多少の変更はあったものの一貫して継承している。
なぜ911がこれほどまでにもてはやされているのか、その最大の要因は〝走り〟にほかならない。強力なエンジンに強靭なシャシー、正確なハンドリングやキャパシティーの高いブレーキなどによる卓越した走りは、いつの時代も世のスポーツカーのベンチマークとされてきた。
911の歴史は空冷か水冷かで明確に線引きされ、クルマとしてのキャラクターもだいぶ異なる。スポーツカーとしての資質を追求した軽量でコンパクトな空冷時代に対し、水冷時代はボクスターやケイマンといった弟分もできたこともあって、より上級仕様のスポーツモデルとしてGTカー的な性格を強めた。
996型でついに水冷化
実質初フルモデルチェンジ
964型や993型が登場した80年代終盤から90年代にかけてのポルシェは、経営的にかなり厳しい状況で、世界販売台数が現在の10分の1程度だったように記憶しているが、911に関しては短いスパンで世代を移行したことが印象的だった。
964型では4WDやATな新しいものを積極的に取り入れ、冷房の効きを向上させるなど快適性にも配慮し、より多くのユーザーに受け入れられるように努力していた。
空冷の集大成となる993型では、最後の最後にここまでやるかというほど大胆かつ緻密に手が加えられていたことに驚かされたものだ。
大きな節目となる996型は、97年に登場した。実質的に911史上で初めてのフルモデルチェンジであり、水冷化とともにサイズの拡大や空力の改善、快適性の向上が図られた。
ただし、996型の初期型はあまり評価が芳しくなかった。ハードとしては進化していたことには違いないが、よろしくなかったのは、走りが面白みに欠けたことだ。それは当時出てまもないボクスターも、売れたものの同様だった。ただし、ポルシェ自身もそれを認識していたのか対応は早く、頻繁に改良を繰り返して時間の経過とともに評価を高め、〝最新こそ最良〟であることを知らしめた。
991型の後期型では全車ターボ化に踏みきったが、ターボでは不利なレスポンスを損なわないよう最大限に配慮されていることが乗るとよく分かった。992型ではさらなる軽量高剛性化と後輪操舵の採用拡大が特筆できる。こだわるのはあくまで〝走り〟ということだ。
また、911はもともとバリエーションの豊富さでも他とは一線を画しており、それは現在にも受け継がれている。高性能版にも何種類もあり、一方でオープンカーにも非常に力を入れているのも特徴的だ。
我々にとってもポルシェが何をやっているかというのは非常に興味深く、常にウオッチしているのだが、こう来たかと驚かされることは少なくない。
モータージャーナリストの視点!
旧い911と新しい911が特異的な相場を形成。「911」と名の付くクルマは全体的にかなり割高な状態が続く。中には驚くほど高価なものもあり、何か法則性があるというよりも、いかにも高そうなモデルがやはり高いというほかない状況だ。特に空冷911は昔なら200万円しなかったような個体が、1000万円を優に超えていて驚く。比較的安いのは996と997の走行距離が多めの個体で、付加価値の高いモデルの高年式で走行距離が少ない個体は新車価格を超えているケースも珍しくない。
各世代のウリはここだ!
964型(1989年~)

近代的な機構を積極導入
● モノコックボディーを採用
● 4輪駆動のカレラ4を設定
● ティプトロニックを搭載
3.6Lという大排気量のエンジンに、センターデフとリアデフ双方に電子制御LSDを備えるという凝った4WDシステムを搭載。写真はポルシェ911カレラ4 “30th Anniversary Edition”。

中古車小売り価格帯 1260万円~2100万円 |
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993型(1993年~)
空冷ポルシェの集大成

● マルチリンク式
リアサスペンション
● 左右独立等長エキゾースト
● 6速MTとティプトロニックS
Iアームとセミトレーリングアームを組み合わせたような独自のマルチリンク式リアサスペンションを採用し、ロードノイズの振動遮断を追求。乗り心地の良いドライビングを実現した。

中古車小売り価格帯 1050万円~2400万円 |
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996型(1997年~)/
997型(2004年~)

水冷化や大型化により快適性が向上
● 各部を傾けた空力フォルム
● DOHCエンジンにバリオカム
やバリオラムを搭載
● 7速のPDKを搭載(997型)
フロントウインドシールドは空冷時代の911と比較すると寝かされ、フロア下面のフルフラット化とも併せて空気抵抗が減少。水冷化により大型化したが、重量は993型に比べ軽量化された。

996型
中古車小売り価格帯 250万円~1800万円 |
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991型(2011年~)/
992型(2018年~)

高性能スポーツカーとしての矜持
● さらなる軽量化と高剛性化を
● 全車ライトサイジングターボエンジンへ
● 市販車で世界初の7速MTを搭載
市販の乗用車用としては世界初の7速MTを搭載した。最高速には6速ギアで到達し、7速ギアはロングレシオとなっていて、高速走行時にエンジン回転数を抑え、燃費向上に効果がある。

992型
中古車小売り価格帯 830万円~2200万円 |
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オークマン2025年1月号掲載








