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シトロエン DS3②【思い出の車列伝】




見る人を魅了する

美しき小さな高級車


シトロエン DS3

シトロエン DS3として生まれ、その後ブランドとして独立。

パリ生まれの独特な世界観を持つこの車を

モータージャーナリストが語ります。


Text : Koichiro Okamoto(Motor Journalist)


シリーズからブランドへ

併売から専売へと格上げ


 1955年から約20年の長きにわたり異彩を放ち続けた高級サルーンの「DS」は、シトロエンを語る上で欠かせない存在だ。

 そのDSとの関連性を匂わせる、「常識にとらわれない。過去へのオマージュでもない」という微妙な触れ込みで、シトロエンに「DSライン」が加わったのが2009年のこと。DS3を皮切りに順次、DS4とDS5が翌年より日本に導入された。

 ところが14年、シトロエンの一つのシリーズだったDSが、新規のブランドとして独立するという予想外の展開を迎えた。同年秋の東京モーターショーでもDSとシトロエンは別々にブースを設けていた。翌年から日本でも販売が開始された。当初はシトロエン販売店で併売されたが、17年から専売店の「DS STORE」と既存のシトロエン販売店内に設けた専売スペースの「DS SALON」により専売体制が導入された。

 ただし、しばらく車両自体に変更はなく、ほぼ従来のままで、コーポレートマークの「ダブルシェブロン」が「DS」のロゴに変わった程度だったのだが、ほどなく16年頃から〝アバンギャルド=前衛的、革新的〟というDSのコンセプトに合わせて各モデルにアレンジが施された。

 そんなDSの中でもエントリーモデルのDS3は、全長4mを切るコンパクトなサイズやリーズナブルな価格によりもっとも人気を博した。

 宙に浮いたように見えるルーフや、シャークフィンと呼ぶ太いサイドピラーのデザインが特徴で、ルーフのタイプやボディーカラーコンビネーション、トランスミッションなどが最大55パターンの中から選べる「ビークルパーソナリゼーション」の設定も特筆できる。

 パワートレーンは時期により1・2L直3の自然吸気とターボ、AMTとATなども用意されたが、高性能版として初代に提供されたBMWとの共同開発による1・6L直4ターボには6速MTが組み合わされ、ホットハッチ的な味わいを求めるファンの期待にも応えた。

 途中で追加されたカブリオは、ルーフサイドアーチの骨格を残したセミオープン構造により3通りのルーフスタイルを楽しむことができた。


DSオートモビルとして

新たに開発された2世代目


 DSオートモビルにとってDS7に次ぐ完全なニューモデルとなる2世代目は、19年に日本に導入された。

 パリで生まれ育ったことで、〝見る人を引きつけてやまない〟とアピールするデザインこそ、やはりDS3の真骨頂だ。

 ふくよかな面構成のボディーパネルの随所に凝った意匠が施されており、インテリアもひし形のモチーフを並べたインパネや、〝クル・ド・パリ〟と呼ぶキラキラ輝くシフトセレクター周り、腕時計のストラップをイメージしたという独特の柄のシートなど、至るところがいちいち印象的なデザインなのだ。

 初代と違ってややリフトアップされており、Bセグとしては大柄になったことで前後席とも狭さを感じさせない空間が確保されている。

 当初は車名に「クロスバック」が付けられていたが、23年のマイナーチェンジでシンプルな「DS3」に改名された。

 こちらも日本向けのパワートレーンは時期により異なるが、1・2L直3ガソリンと、可変ジオメトリーターボチャージャーを備えた1・5L直4ディーゼルのほか、一時期はBEVの「E-TENSE」もラインアップされた。

 ドライブフィールは上質で静粛性も高い。足回りはしなやかな中にも引きしまった感覚があり、コンパクトカーらしくハンドリングも比較的キビキビとした味付けにされている。

 いかにもパリで生まれ育ったことをうかがわせる、独特の世界観を持った小さな高級車だ。


モータージャーナリストの視点!


 流通台数は豊富とはいえない中でも、初代はMTやカブリオの比率が意外と高く、いずれもそれほど割高な印象もなく、このクルマに興味を持つ人では多いであろうMTやカブリオに乗りたい人も探しやすい状況にある。2代目は新車価格が上がったことや、まだ年式高く距離が伸びていない個体が多いせいか中古車価格もそれなりとなっている。中でもより流通台数が少ないE-TENSEは、絶版となって投げ売りになるかと思いきや、むしろ他の欧州製BEVほど落ち込んでいないように見受けられる。指名買いする人がそれなりいるのか、今後の動向が気になる。


各世代のウリはここだ!


シトロエンDS3

(2009年~2019年)

新生DSの第1弾として

多彩なパワートレーン

● カブリオもラインアップ

● 世界に1台のパーソナルカーも可能


エクステリアはDSをモチーフとした、ルーフが浮いているように見える「フローティングルーフ」が特徴的。ボディやルーフ、ダッシュボードやシートなどのカラーを自由に組み合わせられる「ビークルパーソナリゼーション」が設定されているため、組合せによっては、世界に1台だけのパーソナルカーを作ることも可能だった。セミオープンモデルの「DS3カブリオ」は、日本市場では2013年より販売された。

中古車小売り価格帯

30万円~130万円


DS3 CROSSBACK(2019年~)


優雅で快適なコンパクトSUVに

● EMP1プラットフォームを採用

● 1.2L直3ガソリンターボ+8速AT

● 純BEVの「E-TENSE」を設定


EMP (Efficient Modular Platform)は現・ステランティスが開発したエンジニアリングアーキテクチャー並びにプラットフォーム。EMPは大別すると小型~中型車に採用される「EMP1」と中型~大型車の「EMP2」がある。


中古車小売り価格帯

230万円~430万円


DS3(2023年~)


マイナーチェンジを機に改名

● インフォテイメント系など装備が充実

● 内外装の小変更及び新色を設定

● 1.5L直4ディーゼルと1.2L

 直3ガソリンターボ


ボディカラーは、従来のブランバンキーズ(ホワイト)、クリスタルパール(ベージュ)に加え、新色のグリラケ(写真上/グレー)、ルージュディーバ(写真左/レッド)の全4色が設定された。



中古車小売り価格帯

350万円~400万円




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オークマン2025年5月号掲載


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