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フォード・マスタング②【思い出の車列伝】


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およそ60年間君臨する

アメ車の中のアメ車!


フォード・マスタング


日本でもその名が轟くアメ車、

フォード・マスタング。

発売当初の熱狂を経て、60年を過ぎた今も

根強い人気があるというこの車を

モータージャーナリストが解説します。


Text : Koichiro Okamoto(Motor Journalist)


初代の爆売れぶりは語り草

5代目の成功の影響は絶大


数あるアメ車の中でも、マスタングは特別の中の特別な存在だ。当初は「ムスタング」と呼ばれた日本でもなじみ深い車名は、「野生馬」を意味する。

 すべては1964年に始まった。乗用車をベースにスタイリッシュに仕立て、低価格で販売して好みでいろいろ選べるようにするという画期的なアイデアで売り出された初代マスタングは、発売初日だけで約2万2000台もの注文があり、発売後1週間で全米のフォード販売店に400万人以上が来店し、販売台数も発売1カ月で10万台を、さらにはわずか1年11カ月で100万台を突破したという。

 続く2代目はオイルショックの影響でダウンサイジングされ、3代目はいきなりヨーロピアンな雰囲気にガラリと変わった。

 4代目は、実は次期マスタングになるはずだったプローブというスポーティークーペが、マスタングとしてふさわしくないとの声を受け、仕切り直して新たに開発されたクルマが少し遅れて発売されたもの。これがなかなか好評で、当時円高だった日本で驚くほどの低価格で販売されたこともあり人気を博した。

 次いで5代目では「リビングレジェンド」のコンセプトに基づき、偉大なる初代の要素をよりダイレクトに再現した内外装デザインが大いに受けた。その成功は世界の自動車メーカーに多大な影響を与え、リバイバルがブームとなった。

 5代目のコンセプトを継承し発展させた6代目は、よりアグレッシブなデザインとなり、メカニズム的にも新しいものを積極的に取り入れて、現代的なスポーティーカーへと進化を遂げた。


5代目までリジッドを踏襲

6代目でついに独立懸架に


マスタングのようなクルマで21世紀に登場した5代目まで、リアにリーフリジッド式サスペンションを採用していたのは極めて珍しいことで、世界を見渡しても他に心当たりがない。

 その理由は簡単で、マスタングはモータースポーツに用いられることも多く、剛性面で有利で旧来からのパーツやノウハウがそのまま使えることから、あえて残されていたのだという。

 ところが、世界戦略車として開発された6代目では、ついに4輪独立懸架の足回りが与えられた。

 新設計されたサスペンションは、フロントがマクファーソンストラット式で、リアにはインテグラルリンク式独立サスペンションを採用。フロントには軽量高剛性のペリメーター型サブフレームが配された。

 パワーユニットには、V8の改良版と共に、314psの最高出力と、474N・mの最大トルクを発生する新開発の2・3L直4エコブーストエンジンが搭載されたのも特徴だ。当初はV6も用意されたが、マイナーチェンジ時に廃止された。

 インフォテイメント系についても当時最新のものが与えられた。見た目は往年の初代の面影を残しながらも、中身は現代的に洗練されていたのが6代目。

 当初は左ハンドルのみの50周年記念限定車が先行して発売され、初の右ハンドル車もメドが立った矢先に、2016年秋をもってフォードが日本市場から撤退した。しかしその後も並行輸入業者の手により、日本の保安基準に適合を図った新車のマスタングが購入できる体制が整えられたのは根強いファンにとってはありがたいかぎりだ。

 思えば登場から60年余りの間、途切れることなく販売されてきたのも、マスタングの誇れるポイントに違いない。同時期に誕生したライバルはすでに消滅した例が多々あり、手ごろなアメリカンスポーツとして双璧を成したカマロも現在は 世紀の初めに続いて再び販売されていない。

 かたやマスタングは22年秋にはさらに進化した現行の7代目が登場。いつの日か再びフォード車が日本で正規販売される日を望まずにいられない。


モータージャーナリストの視点!


 特徴的な相場となっていて興味深い。もともとプチカルト的な人気を博していた初代は、少し前には考えられないほど値上がりしている。その一方で、新世代のマスタングも、とくに高性能版の新しめの個体は1000万円超えが多数見受けられる。もっとも流通が豊富な5代目も年式のわりに高めの相場となっているほか、4代目も新車が低価格で、評価もそれほど高くなかったにもかかわらず、じわじわと相場が上がってきているのも面白い。ほとんど流通していない2代目と3代目を含め、どの世代のマスタングもこれから値上がりしていく可能性がありそうだ。



各世代のウリはここだ!


フォード・マスタングの変遷


●初代

(1964年~1973年)

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伝説の初代は高騰中ながら流通多し

● 発売後1年11カ月で100万台を販売

● フルチョイスシステム採用

● 1971年に「ビッグ・マスタング」登場


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1971年、史上最大のマスタングが登場。初代前期より全長約30センチ、重量約280キログラム増加。その風貌から通称、ビッグ・マスタングと呼ばれた。

中古車小売り価格帯

700万円~960万円

●2代目

(1994年~2005年)

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マスタングらしさがよみがえった

● 238万円~の低価格で発売

● 初代をほうふつとさせつつ現代的にアレンジ

● 安全性や快適性に配慮

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マスタングの誕生30周年となる1994年に、初代マスタングのディテールが織り込まれた4代目が登場した。同年5月には日本でフォードジャパンが正規に発売開始。



中古車小売り価格帯

70万円~300万円


●5代目

(2005年~2014年

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中古車市場における流通の中心

● 「リビングレジェンド戦略」が奏功

● V8、V6ともSOHCエンジンに

● 新開発の専用プラットフォームを採用


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写真は2014 年のマスタング シェルビー GT500。アルミ製 5.8Lスーパーチャージ V8 エンジンから 662 馬力を生み出し、当時業界で最も強力な量産 V8 エンジンだった。


中古車小売り価格帯

120万円~880万円

●6代目

(2014年~2022年

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正規輸入された最後の世代

● 直列4気筒の「エコブースト」も

● 世界戦略車として右ハンドルを設定

● 「シャークバイト」と称する顔立ち

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6代目でもっとも特徴的なのは“シャークバイト”と呼ばれるフロントグリルを中心にしたフロントマスク。これは1969年式のマスタングをオマージュしたもの。


中古車小売り価格帯

290万円~950万円


Photo by Ford Motor Company


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