業界レポート1月号 Vol.74
- info-am
- 2026年1月1日
- 読了時間: 11分

本レポートでは、オークネット会員様のビジネスのお役に立てますよう
大きなターニングポイントに差し掛かっている自動車産業にフォーカスした情報をタイムリーにお届けします。
執筆・編集:特定非営利活動法人 自動車流通市場研究所 理事長 中尾 聡
▼目次
【回復が期待された2025年の新車市場だったが、残念な結果に。。。】
【中古車相場が異次元の高騰をさらに超えた25年の中古車流通】
【2025年の中古車輸出を総括】
1 自動車流通のトレンド
【回復が期待された2025年の新車市場だったが、残念な結果に。。。】
本来、25年は生産が正常化したことで、新車市場は販売、輸出、生産ともに回復すると期待されていました。しかしながら、終わってみれば好調だったのは輸入車販売だけで、自動車メーカーの認証不正問題によって低迷した24年と、ほぼ変わらぬ残念な結果となりました。今回はこうした25年の新車市場を改めて振り返ってみたいと思います。
【消費者の新車購買意欲を低下させた25年の市場環境】

出所:24年実績は日本自動車工業会(JAAI)が発表している実績値
25年見込は1月から11月までのJAAIの実績値に自流研が独自に算出した12月の見込みを合算した予測値
25年の新車販売は年明けから4月までは、順調に回復を遂げていました。とは言え、前年(24年)の同時期は自動車メーカーによっては完全に生産を停止していた時期との比較であり、パンデミックから回復を遂げた23年と比較するといずれの月も大きく下回っていますので、期待通りの回復とは言えませんでした。そして5月になると勢いは鈍化し、さらに7月以降は連続して前年割れが続きました。
このように低迷した背景には、物価高騰や車両価格の値上げ、長納期化に加え、半導体供給問題や新型車投入不足などによって消費者の買い控えが生じています。また年後半にはジャパンモビリティショー2025が開催されましたが、あくまでも未来志向の展示が中心で、むしろ購入を先送りする動きや、10月末には新政権が誕生しましたが、販売台数を浮揚するようなことはなく、逆に減少しています。
【25年の新車輸出はトランプ関税に翻弄された一年】

出所:24年実績はJAAIが発表している実績値
25年見込は1月から10月までのJAAIの実績値に自流研が独自に算出した11月から12月の見込みを合算した予測値
25年の新車輸出は、輸出全体の3割強を占める米国向けでトランプ関税の影響を大きく受けた一年でした。台数こそ、前年を辛うじて維持しそうですが、収益性は大きく悪化しました。追加関税分を現地販売価格に転嫁することができなかったため、それをコストとしてメーカーが自社で吸収し、利益率は大幅に低下しています。ただ、円安により多少はマイナス分を補填できたかとは思われます。
このように利益を削ってまで台数維持に走ったことから、決算上は「売上維持・利益減少」という構図となり短期的には評価しづらいですが、長期的な戦略としては、米国市場は依然として日本メーカーにとって最大の収益源であり、台数を下げると販売網やブランド力が弱まり、将来の回復が難しくなるため「守りの戦略」としては合理的であったと評価できます。こうして存在感を維持したことで、市場ポジションを守り切ることはできました。
【輸入車新規登録台数は統計開始(07年)以来2番目の高水準】

出所:24年実績は日本自動車輸入組合が発表している実績値
25年見込は1月から11月までの日本自動車輸入組合の実績値に自流研が独自に算出した12月の見込みを合算した予測値
新車販売台数に含まれる輸入車の割合は近年確実にプラス成長を遂げています。25年は前年比110.9%の35万5853台が見込めます。円安で価格的には不利だったにもかかわらず、輸入車販売が好調だった背景には、株価が上昇(日経平均が5万円突破)し、資産が拡大した富裕層の超高級車需要が高まりをみせ、またスズキの「ジムニーノマド」「フロンクス」、ホンダの「WR-V」など海外生産の逆輸入車が急増、さらに欧州メーカーがEV・PHEVを積極投入するなど複数の要因が重なりました。
【需要不足+供給制約の二重苦に見舞われた25年の自動車生産】

出所:24年実績はJAAIが発表している実績値
25年見込は1月から9月までのJAAIの実績値に自流研が独自に算出した10月から12月の見込みを合算した予測値
これまで述べてきたように、25年は物価高、値上げ、長納期化で需要が鈍化し国内販売は停滞。輸出はトランプ関税によって採算悪化。さらに国内外ともに量販モデルの新型投入が少なく、販売刺激が弱かったこと。また半導体や部品供給の不安定さが続き、フル稼働できない工場も発生するなど、総じて工場稼働率も上がりませんでした。要するに、需要不足+供給制約の二重苦に見舞われてしまい、自動車生産にとっては厳しい一年となりました。
ここがPOINT!
正直なところ、新たに高市政権が誕生したことで、速やかな自動車産業の回復を期待しましたが、冷静に考えれば、政権誕生からわずか2ケ月あまりでそれを期待してしまうのは酷なことです。実際に政権移行後は、暫定税率の廃止、環境性能割の免税、エコカー減税の延長等々、矢次ぎ早に政策を打ち出しています。その効果が出てくるのも今年に入ってからでしょう。今後はそれを期待しつつ、しっかり効果測定もしていきたいと考えます。
2 中古車流通のあれこれ
【中古車相場が異次元の高騰をさらに超えた25年の中古車流通】
25年は何度となく中古車相場の高騰についてお伝えしてきましたが、改めて振り返ってみると、25年はこれまで過去数年続いた相場高騰の延長線上にありながら、それまでの水準をも遥かに凌駕し、市場構造そのものが変質したのではと思わせるほどの強烈な一年でした。
今回は、中古車登録&届出台数とオークション各指標の25年見込と24年実績を比較し、振り返ってみたいと思います。
【表面的な統計では見えにくいが、国内小売が大きく低迷した一年】
中古車登録&届出台数を24年と比較してみますと、25年は登録車、軽自動車ともにわずかに下回ってはいますが、それほど大きく変化したとは言いきれない数値です。しかしながら実状は大きく変化しました。どのように変化したかと言えば、小売台数が大幅に減少しています。小売台数は明確な数値は発表されてなく、唯一、リクルート自動車総研が発表している中古車購入実態調査で伺い知ることができますが、それによれば24年は約310万台でした。しかし25年は、多くの中古車事業者に話を聞くと一気に220万台を割り込むのではと言うのが大方の予想です。
このように小売が低迷した背景には、新車同様、物価高騰による消費者の購買意欲が低下したことを前提に、中古車相場があまりも高騰しすぎて、圧倒的多数を占める中小の販売店にとっては、仕入れに関して資金負担が重くのし掛かり、思うような品揃えができず、販売機会を逃してしまいました。こうした背景もあり、ある調査機関によると、25年中古車販売店の倒産件数は過去最多に迫るペースとの報道もあります。一方、豊富な資金力を持つ大型店は確実に業績を伸ばしています。こうして2極化が鮮明になった一年でありましたが、総じて台数は大きく減少しています。
ただ冷静に判断すると、前項でも記述していますが、25年の新車販売は低迷したことで下取車(中古車)の発生(供給)は少なく、国内需要は低下しているのですから、ある意味需給のバランスを保たれていて、本来、相場は落ち着く方向に向かうはずなのですが、実際には需給のバランスを大きく崩すほどの強烈な需要が発生しています。
中古車登録・届出台数 25年見込VS24年実績

出所:24年実績は日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車協会連合会(全軽自協)による実績値
25年見込は1月~11月までの自販連と全軽自協の実績値に自流研が独自に算出した12月の見込みを合算した予測値
【輸出需要が国内需給を飲み込み、異常な価格形成を主導】
それは次項でも総括していますが、中古車輸出の記録的な需要によるものです。その視点でオークション各指標の25年見込と24年実績の比較を見ていただきたいのですが、出品台数はさほど変化はありませんでした。実はこの出品台数は前述の登録台数も同様ですが、再出品や名義変更などで1台の車が複数回カウントされる傾向があるので、そういった意味では実需があまり反映されていません。その点、成約台数はより実需に近く、そこに注目をしていただくと、台数は増加しています。しかし、実需のうち国内小売は大きく減少しているわけですから、もう一方の実需である輸出が大きく押し上げたことを示しています。
さらに象徴的なのは、平均落札価格があくまでも予測値ですが、90万を超えることです。代替サイクル(新車ユーザーが次の新車に乗り換えるまでの期間)が長期化し、発生する中古車の高齢化が進んでいる中で、国内需給だけであれば本来下がっていくべきものが、ここまで高額になったと言うことは、いかに輸出需要が強烈であったかを物語っています。
オークション各指標 25年見込VS24年実績

出所:24年実績は(株)ユーストカーによる実績値
25年見込は1月~10月までのユーストカー実績値に自流研が独自に算出した11月~12月の見込みを合算した予測値
ここがPOINT!
パンデミックに見舞われて以降、国内需給では説明できない「輸出主導の価格形成」が進み、25年はそれが鮮明になった一年ではなかったかと思います。今後もこの傾向が続けば、日本国内で高年式・高額車が枯渇するリスクは現実味を帯びてきます。これは健全な中古車流通の発展を考えると決して良い傾向ではないと思われます。
3 どうなってるの中古車輸出
【2025年の中古車輸出を総括】
近年、飛躍的な拡大を遂げている中古車輸出ですが、25年はその勢いがさらに加速した一年となりました。最終的な実績値は今月末発表の財務省貿易統計を待たなければなりませんが、確実に3年連続で過去最高記録を更新する見込みです。今回のレポートでは、このように絶好調だった25年の中古車輸出を改めて総括してみます。
【3年連続で過去最高を更新。輸出総額は1兆7500億円に!!】
自流研が算出した25年通年の中古車輸出台数は、前年比10%増の173万4374台と見込みました。またFOB価格平均も史上初めて100万円を超え、輸出総額は1兆7500億円に達し、前年を2000億円ほど押し上げると見ています。
この算出方法としては、10月までの実績に加え、残り2ケ月の予測として、24年実績と25年の各仕向国の動向、さらに輸出事業者や船会社、港湾関係者などから最新の情報について聞き取りを行い算出しています。
仕向国トップは、2年連続でアラブ首長国連邦(UAE)となることが確実視されています。24年は表向きのトップでした。と言うのも、前年2位のロシアが直接台数にカウントされない第三国経由の規制対象車が5万台近くもあったからですが、25年はその規制車を含めても大きく引き離し、名実ともにUAEがトップとなります。なお、同国についても、あくまでも中継国であり、国内に登録される車両はほとんどなく、ほぼすべて再輸出されますが、日本から輸入された約26万台の中古車のうち、8割にあたる21万台はアフリカ地域に集中して再輸出されたようです。
2位のロシアは長期化するウクライナ侵攻によって、明らかに経済は困窮し、規制車、非規制車ともに減少しました。
3位には、タンザニアが入りそうです。アフリカ勢としては、初の10万台超えで、またトップ3にランクインするのも史上初の快挙となります。
4位には復調したチリが4年振りにこの位置に返り咲きしそうです。復調の要因としては、同国の8割がコンテナ輸送ですが、RO-ROも含め、24年には悪化していた海上輸送の環境が、25年は改善したことが大きいと言えます。
【アフリカ地域には直接、間接含め71万台が輸出され全体の4割を占める】
4位とわずかな差で5位に予想しているのがケニアですが、ここも過去最高を更新する確率が高そうです。ここで特筆すべきは、3位のタンザニアを含め、アフリカ地域の勢いが凄く、地域全体では直接、日本から輸出された中古車は50万台にも上ることです。(24年は35万台)さらに前述したようにUAEを経由して同地域に間接的に輸出された台数は凡そ21万台もあります。それを合算すると71万台にも上り、輸出全体の4割を占めるまでになっています。
同地域への輸出が、これほどまで急拡大している背景としては、地域全体が豊富な天然資源、鉱物資源に恵まれ、近年、急ピッチで開発が進み、それに比例して労働人口も増え、国民一人当たりの所得が増加したことで、日本からの中古車需要が高まっています。この傾向は以前から伺えましたが、25年はそれが顕著に表れた一年でした。
あと25年の中古車輸出を牽引した国として、2月から5年振りに復活したスリランカの存在があります。同国は事実上5年間も鎖国状態にあったため、まさに“堰を切った”勢いで輸出が再開され、7月には単月で過去最高となる1万1531台を記録しました。また同国の人気車種である1000~1500CCクラスの相場が高騰したことから、その代替として新たに軽自動車の中古車需要が高まり、これが全体にも波及し、中古車輸出に新たな局面を生み出しています。
2025年中古車輸出台数見込

算出方法:25年1月から10月までの財務省貿易統計の実績値に
残り2ケ月は24年実績や25年の仕向け国の動向、関係者への聞き取りの結果を自流研が独自に数値化し、合算した。赤字は過去最高値
ここがPOINT!
25年は上位25ケ国中、前年比で二桁成長を遂げている国が14ケ国(24年は7ケ国)、過去最高を更新している国が10ケ国(24年は7ケ国)と多くの国が絶好調でした。総じて、今後この勢いが弱まる気配が一切見当たりません。筆者は以前から30年に中古車輸出は200万台に到達すると予想し、近年の勢いから、さらに前倒しするのではないかと見ていましたが、それを確信させる一年になったと言えます。
2026年1月号


