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業界レポート4月号【緊急版】 Vol.77

  • 4 時間前
  • 読了時間: 5分


本レポートでは、オークネット会員様のビジネスのお役に立てますよう

大きなターニングポイントに差し掛かっている自動車産業にフォーカスした情報をタイムリーにお届けします。


執筆・編集:特定非営利活動法人 自動車流通市場研究所 理事長 中尾 聡


 

【緊急レポート 中東情勢の緊迫化による中古車輸出への影響】


~長期的な成長トレンドは不変だが、短期的混乱は避けられず~


 近年、日本の中古車輸出は飛躍的な成長を続け、今年は通年で200万台超えも視野に入る勢いを見せていました。しかし、2月28日に米国とイスラエルがイランへの攻撃を開始したことで、中東情勢は一気に緊迫化。ホルムズ海峡を越えたペルシャ湾内には、日本の中古車輸出最大の仕向地であるアラブ首長国連邦(UAE・ドバイ)が位置しており、影響は避けられそうにありません。今回は緊急レポートとして、現在の状況と今後予想される影響についてお届けします。



【アフリカ向けに“仕切り直し”もしくは“国内オークション処分”苦渋の選択肢】


 まず現状について報告すると、本来であれば、ドバイのジュベル・アリ港に陸揚げされ、ドバイオートゾーン(中古車貿易のための経済特区)に搬入されるべき日本の中古車は、2月28日以降、ホルムズ海峡が事実上封鎖されたために、その手前のオマール湾の沖合で1週間程度、滞船していましたが、状況が打開できないとの判断からか、スリランカのハンバントータ港へ向かったり、日本へ引き返す動きが出ています。ただ、車に限らず、海上貨物は同じような動きをしており、前述のハンバントータ港では3月中旬時点で港湾内が溢れかえってしまい、受入の制限が始まったようです。有事の際に、目的地以外で荷を下ろしてしまうことは許される行為ですが、その後の対応は、船会社は関与せず、あくまでもシッパー自身が対応しなければならないため、未知の港に降ろされるくらいなら、いっそのこと日本にシップバックしてもらった方が、対応はしやすいようです。


軍事衝突が拡大する中東地域
軍事衝突が拡大する中東地域

 ちなみに現在、海洋上や各港で待機している車両を含め、1万台を大きく超える同国向け中古車が行き場を失っているとみられています。本稿執筆時点(3月20日現在)では、シップバックされた車両はまだ日本に戻ってきてはいませんが、UAE向け中古車輸出大手の幹部に話を聞きますと「ドバイはあくまで中継拠点。最終仕向地は、ほぼアフリカ各国なので、戻ってきた車両はアフリカへ直接輸出し直す方針だ」とのことです。しかし、この“仕切り直し”には多大な手間とコストが伴います。


• 日本到着後にコンテナをデバンニング

• アフリカ各国向けに仕分け

• 国によってはドバイ経由では不要だった輸出前検査を新たに受検

• 再バンニングの上で再出荷


 さらに追い打ちをかけるのが運賃の急騰です。アフリカ向け40ftコンテナ運賃は、2月末:1,500ドル → 3月中旬:4,500ドル(3倍)と暴騰しており、総コストは車両代金を上回る水準に達しつつあります。こうした状況を踏まえ、事業者の間では次の二択が現実味を帯びています。


• アフリカ向けに再輸出する(高コスト・長期化)

• 日本国内のオークションで処分する(再輸出よりダメージが少ない?)


いずれも大きな損失を伴うため、事業者は極めて難しい判断を迫られています。



【今後の影響と見通し】


 さて、今後の影響と見通しですが、今回の紛争以前から、日本の主要港湾は中古車輸出の好調を背景に高い稼働率が続いていました。そこへシップバックされた車両が大量に戻ることで、港湾ヤードが一気に満杯となり、搬入制限が発生する可能性があります。結果として、UAE向きに関係なく、オークションで落札した輸出車両が行き場を失う「輸出車難民」が発生する懸念が強まっています。こうして仕向国に関係なく「落札しても輸出できない」という状況が生じれば、自ずと輸出事業者は買い控えに転じ、相場は急速に下落する可能性が高くなります。

 またこうした状況下では、輸出事業者は車両を一時的に保管するヤードの確保が不可欠となります。資金力のある大手事業者は対応可能で、すでにターミナル事業者、物流企業、オークション会場などに対し、ヤード借用の交渉が始まっているようです。ただ多くを占める中小事業者にとっては、どうにもならない厳しい状況に追い込まれています。

 また輸出に関わるあらゆる作業においても、今後混乱が増すばかりです。まずは船会社ですが、ホルムズ海峡が閉鎖されているため、配船スケジュールの全面的な見直しを迫られています。またバンニング事業者は、それでなくとも、このところの需要急増に対し人材不足が続いていた中で、今回の事態で不慣れなデバンニング作業も発生し、対応に苦慮しそうです。輸出検査業者も同様に人材不足の中、検査台数が一気に膨れ上がってしまいます。このように影響はサプライチェーン全体に及びそうです。

 最後に今後の見通しですが、紛争の終結時期は依然として不透明であり、当初想定されていた短期収束の見込みは薄れつつあります。仮に早期に停戦が成立したとしても、物流全般で開戦前の状態に回復するまでには、少なくとも2〜3か月を要する見通しです。ただし、これはホルムズ海峡に機雷が敷設されていないことが前提であり、もし機雷除去作業が必要となれば、回復期間はさらに長期化する可能性があります。従って、少なくとも26年上期は影響が避けられないとみるのが妥当でしょう。

 とは言え、UAE向けについてはアフリカ向け直輸出で代替が可能であり、その他の仕向国でも旺盛な需要自体は継続しています。20年の一時期、パンデミックの際に世界のほとんどの港湾が機能不全に陥ったことがありましたが、当時と比較すれば影響は限定的だと考えられます。

 このように過去にも紛争・天災・パンデミックにより輸出が一時停止し相場が暴落した例はありますが、日本の中古車に対する世界的な需要が減退したことは一度もありません。むしろ停止期間が長いほど、再開後の需要は大きく跳ね返る傾向があります。従って、今回の紛争により、短期的な影響は避けられないものの、長期的な成長トレンドに変化が生じることはないと言えるでしょう。

2026年4月号緊急レポート

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