業界レポート4月号③ Vol.77
- 3 日前
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大きなターニングポイントに差し掛かっている自動車産業にフォーカスした情報をタイムリーにお届けします。
執筆・編集:特定非営利活動法人 自動車流通市場研究所 理事長 中尾 聡
【新車低迷がもたらす“中古車供給の空洞化”】
中東情勢の悪化により、UAE向けを中心とした中古車輸出は徐々に停滞の色を強めています。(詳細は次項参照)しかし足元の国内相場は意外にも底堅く、例年であればゴールデンウィーク前に下落基調へ転じる時期であるにもかかわらず、高値圏を維持している状況です。市場関係者からも「思ったほど下がらない」との声が聞かれます。ただし、この静けさは長く続かない気配が感じられます。中東情勢が自動車市場全体に影を落とす中、今後の中古車市場がどのような局面を迎えるのか、その構造的な変化を考えてみます。
【中古車供給量の今後の変化】
まず注視すべきは、中古車の供給量です。すなわち“発生台数”の減少です。中古車の供給源は新車販売時の下取車であり、新車市場の動向がそのまま中古車供給に跳ね返ります。現在、新車販売は25年下期から低迷が続く中で、今回の中東紛争が追い打ちをかけ、26年にかけてさらに厳しい局面が予想されます。
象徴的なのが日産の減産です。対象は中東向けの主力車種「パトロール」ではなく、国内向けの「エクストレイル」と「セレナ」です。採算性の高い中東向け車両を保管するヤード確保を優先するため、国内分の生産を抑える判断に踏み切りました。現時点では3月23日から1週間で約1200台の減産としていますが、紛争が長期化すれば規模拡大は避けられず、他メーカーにも波及する可能性は高いです。これは昨年から続く供給制限をさらに悪化させ、新車販売の低迷と中古車発生量の減少という負の連鎖を生み出します。
さらに、燃料高騰による物流コスト上昇、部品・原材料価格の高騰が車両価格に転嫁されれば、新車価格は一段と上昇します。インフレ下で消費者の購買意欲が弱まる中、高額商品である新車の販売は伸びにくく、中古車の供給量は一層先細ることが予測されます。こうした構造的な供給減が、今後の中古車市場に大きな影響を与えることは避けられません。

【中古車相場の今後の動向】
中古車市場を支えてきた中古車輸出も、今回の紛争の影響を正面から受けています。別表の「直近5年間の中古車相場7日間平均移動推移」が示す通り、26年の相場は“異次元”と評された25年よりもさらに15万円高い水準でスタートしました。例年通り3月に入って緩やかな下落基調に転じてはいるものの、戦争開始から2週間が経過した時点でも、なお前年同時期より13万円高い水準を維持しています。
しかし、この強含みは長続きしない可能性が高いと言えます。今後、UAE向け中古車がシップバック(積戻し)され始めれば、港湾ヤードは急速に逼迫し、搬入制限が発動されるリスクがあります。搬入制限が始まれば、仕向国に関係なく買い控えが発生し、相場が一気に下落する可能性が現実味を帯びます。現在の“静けさ”は、むしろ暴落の序章と捉えるべきかもしれません。
直近5年間の中古車相場7日間平均移動推移

さらに、港湾周辺のヤードは新車メーカーも中東向け車両の保管場所確保に奔走しており、今後は中古車輸出業者との間でヤード争奪戦が激化することが予想されます。物流の停滞と保管能力の逼迫が重なれば、中古車輸出の流れは一時的に大きく制約され、相場形成にも強い下押し圧力がかかるのではないでしょうか。
ここがPOINT!
今後の焦点は、紛争の収束時期と港湾・物流の正常化がどれだけ早く進むかに尽きます。ホルムズ海峡封鎖の影響が海運全体に及べば、一定期間の相場下落は避けられません。ただし、中古車輸出の需要回復は早いです。UAE向けはアフリカ向けへの直接輸出で代替可能であり、その他の仕向国の需要も依然として旺盛です。むしろ懸念すべきは供給の回復が遅れる点です。国内の中古車発生量が細る中で、相場が一時的に下落したとしても、供給が追いついた瞬間、これまで経験したことのない相場高騰局面が訪れる可能性が十分あり得ます。
2026年4月号
