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業界レポート5月号③ Vol.78

  • 2 日前
  • 読了時間: 4分


 今月のレポートも先月に続き、イラン情勢の影響が中心的なテーマとなりました。

トランプ大統領による停戦に向けた発言は日々変化しており、このレポートが公開される頃には、事態が終息に向かっている可能性もあれば、逆に攻撃が再開されている可能性もあります。先行きが極めて不透明な状況ではありますが、こうした背景をご理解のうえ、ご高覧いただければ幸いです。


執筆・編集:特定非営利活動法人 自動車流通市場研究所 理事長 中尾 聡


【封鎖された海峡、止まった商流

UAE中古車ビジネスの現場で何が起きているのか】


 米国とイランによる初回の停戦協議は不調に終わったものの、4月17日にはイラン側がホルムズ海峡を航行する商業船舶を「完全に開放する」と表明しました。しかし国際海運団体であるボルチック国際海運協議会は、依然として高いリスクが残存しているとの見方を示し、海峡を通過する船舶数が紛争前の水準に戻るには相当な時間がかかると指摘します。いずれにしても、日本の中古車輸出の最大仕向国であるアラブ首長国連邦(UAE)向けの物流は、3月以降、完全に停止している状況です。2025年には日本から25万台強(全体の14.6%)の中古車が同国へ輸出されており、その影響は極めて大きいと言えます。今回は現地の最新の状況と今後の代替の可能性についてレポートしてみます。



【近年、UAE向けの中古車輸出は4つに分類される再輸出】


 UAE向け中古車は、単なる「UAEの需要」ではなく、再輸出の中継地として成立してきました。現状、この再輸出は4つに分類されます。第一に、全体の約8割を占めるのがアフリカ向け再輸出で、タンザニア、ケニアを中心とした東アフリカから、西アフリカまで広く分布します。第二は、ロールスロイスやランボルギーニ、ポルシェといった高級中古車で、これは唯一、UAE内で登録され、また隣接する中東湾岸諸国にも再輸出されるものです。第三はロシア向けの規制対象車です。直接日本から輸出できないHVや1900CC以上のSUV等がロシアへ再輸出されています。そして第四としては、中東地域で右ハンドル車が輸入、登録できるアフガニスタンとパキスタン(アフガニスタンに接する西側)向けの車両です。こうした4つに分類された再輸出の需要が年々高まっていき、巨大な再輸出ネットワークを構築しましたが、今回のホルムズ海峡の封鎖によって、一気に機能不全に陥ってしまいました。




【現地の最新情報と代替の可能性】


 今回、現地でビジネスを展開する事業者に最新の状況を聞いてみました。まずドバイオートゾーン(DAZ:自動車専用のフリーゾーン)で約100台の在庫を抱える中小規模の事業者によれば、3月以降、アフリカからのバイヤーが一人も来ず、「開店休業状態で一台も売れていない」とのこと。資金化できないため日本への送金も止まり、現在生活費にも困窮している。何とか日雇いのアルバイトで家族を支えているが、「このままでは黒字倒産するしかない」と、状況はかなり深刻のようです。

 一方、同地で最大手の事業者は、アフリカ各地に拠点を擁していることから、一時的に直輸出に切り替えて対応していると言います。それと並行して、今後もUAEが“主戦場”であることに変わりはなく、情勢が改善した際に即時再開できるよう、親イランとされる中国系コンテナ会社と交渉を進めていました。

 こうした状況を踏まえると、UAE向け中古車の停止は確かに大きな衝撃ですが、再輸出先の性質によっては“代替可能性”は大きく異なることが見えてきます。アフリカ向けは直輸出で代替可能であり、ロシア向けもキプロスやジョージア経由で対応できます。中近東向けもカラチ港に戻せば輸送ルートは確保できます。唯一、湾岸諸国向けの高級中古車だけは代替が難しいのですが、そもそも台数は多くありません。つまり、UAE向け25万台のうち、大部分は代替ルートで吸収される可能性が高く、輸出台数全体への影響は限定的となる可能性があります。

 ちなみに今回の海峡封鎖により、読者の方からアフリカ向け中古車輸出に関して、「直輸出」と「UAE経由」の違いについての問い合わせが多くなっています。簡潔に言うと、UAE経由は100%業者間の取引(B2B)であるのに対し、より小売に近い(B2C)のが多数を占めるのが直輸出です。


ここがPOINT!


 ホルムズ海峡の封鎖によって、3月全体の中古車輸出実績にどう反映するか気になるところです。ただ財務省貿易統計による3月実績は、このレポートを執筆している段階では未発表なため、あくまでも推測になりますが、3月の中古車相場7日間平均移動を見る限り、依然として、異次元を超えた25年実績よりも15万円ほど高く推移していることから、影響が及んでいるとは考えにくいと言えます。また港湾関係者に話を聞くと、確かにUAEは激減するが、その分タンザニアやロシア、またスリランカ、ニュージーランドなどの上位国が好調だと聞きます。ちなみに昨年3月の実績は15万6355台で、単月での過去最高を記録しました。流石にこれを超えることはないとは思いますが、大きくマイナスにはならないのではという見立てをしています。


2026年5月号

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