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業界レポート6月号① Vol.79

  • 6月2日
  • 読了時間: 3分


 

中東情勢は、米国、イラン双方が強気な姿勢を崩さず戦闘終結への協議は未だに難航しています。一方、日本の自動車市場に目を向けますと、3月の中古車輸出額はこれまで単月の記録を大幅に更新。また4月の新車販売は環境性能割廃止の影響もあって、過去10年では19年4月に次ぐ高水準となっています。依然として先行きの不透明感は拭えませんが、今回はこうした記録にフォーカスしてみました。


執筆・編集:特定非営利活動法人 自動車流通市場研究所 理事長 中尾 聡


【自動車メーカー9社の決算から読み解く前年度の総括と今年度の展望】


 自動車メーカー9社の2026年3月期決算が出そろい、前年度の事業環境と今年度の見通しが明らかになりました。売上高はトヨタとスズキを中心に堅調でしたが、米国の追加関税やEV戦略の見直しが重くのしかかり、9社中8社が減益もしくは赤字となりました。一方で、今年度は中東情勢の緊迫化が新たなリスクとして浮上し、原材料価格や物流コストの上昇が業績を左右しそうです。前年度の総括と今年度の焦点を整理します。


【前年度の振り返り】


 26年3月期は、米国の追加関税が1年間を通じて各社の業績を直撃した年でした。売上高は9社合計で108兆4290億円と前年比2.7%増となり、トヨタは日本企業として初めて50兆円を突破するなど販売面では底堅さがみられました。しかし収益面では厳しく、営業利益は合計4兆4856億円と前期から3兆円以上減少し、7社が減益、1社が赤字となりました。

 特に米国依存度の高いメーカーは影響が大きく、マツダは1549億円の関税負担を受けながらも、コスト改善と固定費削減で515億円の黒字を確保しました。

 一方、ホンダとスバルはEV戦略の見直しに伴う減損損失を計上し、ホンダは営業赤字4143億円、スバルも大幅減益となりました。米国でEV優遇策が打ち切られたことで需要が急減速し、先行投資が重荷となった格好です。

 販売は堅調でも利益が伸びない構造が鮮明となり、関税・EV・コストの三重苦が前年度の特徴だったと言えます。



自動車メーカー9社2026年3月期決算概要

※単位は億円( )は前年比増減%▲はマイナス、△は赤字、-は比較なし ※アーチオンは日野自働車の実績
※単位は億円( )は前年比増減%▲はマイナス、△は赤字、-は比較なし ※アーチオンは日野自働車の実績


【今年度の展望】


 今年度の最大の懸念材料は、中東情勢の緊迫化です。ホルムズ海峡の事実上の封鎖によりナフサ価格が高騰し、樹脂・ゴム・オイル関連など原油由来素材の調達コストが上昇しています。  

 いすゞによれば、ナフサ価格は「紛争前の約1.8倍」に達しており、原材料費の上昇は各社の利益を圧迫する見通しです。

 現時点では大きな供給支障は出ていないものの、情勢が長期化すれば部品調達や生産、さらにはアフターサービスにも影響が及ぶ可能性があります。国内ではオイル交換や車検対応に支障が出る懸念も指摘されています。

 さらに、中東向けの完成車輸送も深刻です。3月に出荷した車両がシンガポールやスリランカなどの中継地で滞留しているケースがあり、メーカーによってはオマーンやヨルダンなど代替港の活用を模索しています。しかし代替ルートは運賃が通常の5倍以上になる場合もあり、物流コストの増加が今期の収益をさらに圧迫する可能性があります。

 半導体不足やレアアース問題を経て供給網の脆弱性が改めて浮き彫りとなるなか、今年度は“地政学リスクへの耐性”が各社の業績を左右する重要なテーマとなりそうです。


ここがPOINT!


 前年度は「売上は伸びても利益が出ない」構造が鮮明になり、今年度は中東情勢という新たな外部リスクが加わります。原材料価格の高騰、物流コストの上昇、完成車輸送の停滞など、利益を押し下げる要因は多岐にわたります。一方で、各社はコスト削減や代替調達の確保など、危機対応力を高めてきました。今期は“守りの経営”が中心となるものの、地政学リスクを乗り越えられるかが日本の自動車産業の底力を測る試金石となりそうです。


2026年6月号

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