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業界レポート9月号③ Vol.82

19 時間前
読了時間: 4分

Ⅲ どうなってるの中古車輸出



 

 本レポートでは、オークネット会員様のビジネスのお役に立てますよう、大きなターニングポイントに差し掛かっている自動車産業にフォーカスした情報をタイムリーにお届けします。

執筆・編集:特定非営利活動法人 自動車流通市場研究所 理事長 中尾 聡



【6月中古車輸出が想定外の最高記録となった理由】


 6月の中古車輸出は15万8584台となり、単月としては、統計開始以来の最高記録となりました。海運混乱や中国発新車輸出拡大による船腹逼迫、また最大の仕向国であったアラブ首長国連邦(UAE)の大幅減少など逆風が続く中で、円安進行や高年式HV・EV需要、さらにロシアの投機的需要が重なり、想定外の高実績となったものです。今回はその構造を分析してみます。


逆風下でも伸びた理由:需要構造の変化


 6月の中古車輸出台数実績は単月で過去最高を更新しましたが、そうは言っても中東情勢で悪化していた海運事情は6月に入って改善されることはなく、船積難民も発生し、輸出ヤードは待機車両で溢れていました。また国内買取事業者からも「相場が落ち着き、輸出の勢いが止まり始めているのでは」との声が聞かれ、輸出事業者大手も「仕入れを抑えざるを得なかった」と語るなど、現場感覚はむしろ減速を示していました。

 実績と現場感覚が乖離した背景には、まず円安進行があります。5月以降円安が急速に進み、一時164円台まで下落したことで、輸出採算が大きく改善しました。また世界的な燃料価格高騰により、高年式HV・EV・軽自動車の需要が強まり、環境規制の厳しい地域を中心に輸出が維持されました。

 さらにロシア向けが大きく伸びました。ロシア航路は海運事情の影響を受けず、船社・ヤードとも安定しており、情勢不安を見越した富裕層の投機需要が急増しました。これら複数の要因が重なり、逆風を上回る高実績となったのです。


燃料別輸出台数26年VS25年6月実績比

出所:財務省貿易統計
出所:財務省貿易統計


26年中古車輸出台数月間推移

出所:財務省貿易統計
出所:財務省貿易統計

高年式需要・再輸出・投機需要が押し上げた6月


 6月の高実績は、複数の要因が重なった結果です。まず、世界規模で燃料が高騰したことで、燃費性能の高い高年式のHVや軽自動車、またEVの需要が強まりました。EVは前年同月比53%増、HVは16%増、軽自動車は17%増と大きく伸ばしました。こうした背景もあって、国内中古車相場は下降局面にあるものの依然高値圏を維持しています。また高年式車の需要が強かったことで、FOB価格も122万2000円と前年を大きく上回り、その結果、輸出額は1937億8965万円と単月で史上2位の水準になっています。

 次に第三国経由のロシア向け再輸出ルートの拡大です。非規制対象車の増加に加え、規制対象車がモンゴル、キプロス、ジョージア、韓国、中国を経由して再輸出される動きが強まっているようです。さらにCIS(独立国家共同体)諸国を通じたユーラシア経済連合や自由貿易協定を活用し、ウズベキスタン、キルギス、カザフスタン、タジキスタンなどを経由する再輸出ルートも拡大しています。これらのルートは中東情勢の影響を受けにくく、6月の輸出を下支えしたようです。

 そしてロシアの投機的需要です。情勢不安を見越した富裕層が「資産としての日本車」を求め、輸出が急増しました。ロシア航路は海運混乱の影響を受けず、安定して輸送できたことも追い風となりました。

 そしてロシアの投機的需要です。ロシアでは「非常事態にはルーブル(現金)ではなく日本の中古車を持て」という言葉が長年語られてきました。要するに、日本の中古車は信用性が高く、資産として価値が損なわれないことを表しています。9月の下院選後に30万〜50万人の兵士増員が計画されているとの見方もあり、情勢不安が高まるほど投機需要は強まる可能性があります。ロシア航路は世界の海運事情の影響を受けず、船社・ヤードとも安定しており、この需要を確実に取り込んでいるようです。これらの要因が重なり、6月は歴史的な高実績となりました。


2025年vs2026年 中古車輸出台数 6月実績比較

出所:財務省貿易統計
出所:財務省貿易統計


ここがPOINT!


 6月の高実績は、円安、高年式車需要、ロシアへの規制対象車の再輸出ルートの拡大、そしてロシアの投機需要という複数の要因が同時に作用した結果です。海運混乱を上回る力が働き、想定外の記録更新につながりました。


2026年9月号

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