業界レポート9月号② Vol.82
Ⅱ 中古車流通のあれこれ

本レポートでは、オークネット会員様のビジネスのお役に立てますよう、大きなターニングポイントに差し掛かっている自動車産業にフォーカスした情報をタイムリーにお届けします。
執筆・編集:特定非営利活動法人 自動車流通市場研究所 理事長 中尾 聡
【中古EV輸出は「資源流出」ではない】
―世界的燃料高騰で高まる日本車の存在感と国内市場の課題―
先般、全国ネットのラジオ情報番組から「中古EVの輸出拡大で日本の都市鉱山が流出しているのではないか」というテーマで出演依頼を受けました。番組内では、こうした見方が一部で広がっているものの、実態は“資源として輸出されている”のではなく、“完成車として世界の交通インフラを支えている”ことを強調してきました。日本の中古EVは、燃料高騰や環境規制の強化を背景に世界で高い需要を獲得しており、日本の輸出産業の一角を担う存在になっています。
中古EV輸出が急拡大する背景
近年、日本からの中古EV輸出が急伸しています。特に今年3月以降は、中東情勢の悪化による世界的な燃料高騰が大きな要因となり、ガソリンを使わず維持費も安い日本の中古EVに人気が集中しています。日本のEVは品質が高く、バッテリー性能の劣化も少ないため、環境対策を進める国々で「即戦力の交通手段」として受け入れられています。
一部では「EVに含まれるレアメタルが海外に流出している」との指摘がありますが、実際に輸出されているのは“資源”ではなく“完成車”です。輸出された中古EVは多くの国で日常の移動手段として使われ、社会インフラとして機能しています。資源として解体されているわけではありません。
また、中古車輸出全体の市場規模も年々拡大しています。6年前の2020年には5193億円から、今年は2兆円を突破する勢いです。日本の総輸出額約100兆円のうち2%を占めるまで成長し、今や中古車は日本の輸出産業の一角を担う存在になっています。

8月17日(月)、JFN系列全国ネットのラジオ情報番組『レコレール』(13:30~15:55)
番組内のコーナー『レコレール・アップデーツ』(14:08~14:28)で最近、TV、新聞等でも話題となっている「なぜ今、中古車輸出が急伸してるのか」について解説しました。
日本の中古EVが世界で評価される理由と国内市場の課題
日本の中古EVが世界で高く評価される理由は、EVの性能だけではありません。日本人のモノを丁寧に扱う文化、極端な気候が少ない環境、全国に整備された道路事情、そして車検・点検制度による品質維持など、良質な中古車が生まれる土壌が揃っています。さらに、半世紀以上続くオークション制度によって、第三者検査と透明な価格形成が徹底されている点も大きな信頼につながっています。
一方で、国内の中古EV市場は発展途上です。EVは充電インフラの整備が不可欠で、メンテナンスも電気系統の知識が求められるため、対応できる中古車販売店や整備工場がまだ限られています。この供給側の制約が、中古EVの国内流通を広げる上で大きな壁となっています。
本来であれば、新車→中古車→ELV→資源回収という循環を国内で完結させることが望ましいのですが、現状では中古EVのリセールバリューが低く、ELVになる前に海外へ輸出される流れを止めるのは容易ではありません。自動車メーカーの中には、海外で新車からELVまで一体で扱うサーキュラーエコノミー型の事業を検討し、そこで回収した資源を日本へ戻す構想も出ています。
ここがPOINT!
中古EV輸出は「資源流失」ではなく、日本の高品質な中古車が世界の燃料高騰・環境規制の中で求められている結果です。日本の中古車は品質・価格の透明性が世界的に評価されており、輸出産業として確立しつつあります。一方で国内中古EV市場はインフラ・整備体制の不足が課題で、循環型社会の実現には国内流通の強化が不可欠です。
2026年9月号
