業界レポート6月号③ Vol.79
- 6月17日
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ホルムズ海峡の閉鎖以降、初めての月となる3月の中古車輸出実績が財務省貿易統計から公表されました。最大仕向国であるアラブ首長国連邦(UAE)向け輸出が事実上ストップしていますが、輸出台数は前年同月比2.2%減とわずかなマイナスにとどまり、単月としては歴代3位の高水準を維持。さらにFOB平均単価は過去最高の130万1千円へと跳ね上がり、輸出総額は単月で初めて2000億円近くに到達しています。地政学リスクの影響を感じさせない“驚異的な3月”の背景を、今回は台数と金額の両面から読み解きます。
執筆・編集:特定非営利活動法人 自動車流通市場研究所 理事長 中尾 聡
【UAE停止でも揺るがない、日本の中古車輸出は“量より質”で過去最高を更新】
4月の新車販売が前年同月比9.1%増と大きく伸び、環境性能割の廃止を見据えた登録の先送りも相まって、新車市場には久々に明るさが戻りました。新車販売の増加は中古車供給量の拡大につながるため、6月以降は相場に変化が生じる可能性があります。一方で、中東情勢の悪化による新車価格の上昇圧力や、輸出市場の不透明感など、先行きには不安材料も多い状況です。国内外の需給が揺れ動くなか、中古車市場はこれまでにない不安定な局面に入りつつあります。
【多くの仕向国で輸出記録を更新し、UAE分のマイナスをカバー】
昨年3月の中古車輸出台数は15万6355台と、当時の単月最高記録を樹立しています(現在のトップは25年10月の15万6543台)。そのうちUAE向けは2万4071台で全体の15.4%を占め、仕向国別では圧倒的な1位でした。それが今年3月はホルムズ海峡の通航が不可能となって、実際に同国向け輸出は2万2572台も大きく減少しました。
ところが、3月全体の輸出台数は15万2758台で、わずか2.2%減にとどめ、単月としては昨年3月に次ぐ歴代3位の記録で好実績となっています。内容を分析するとUAEの減少分を、タンザニアを筆頭とするアフリカ諸国への直輸出が補っています。さらにロシアでは非規制対象車を中心に需要が活発化。中古車輸入解禁から1年が経過したスリランカも大きく伸び、UAEのマイナスを着実に埋めました。
また3月は、キプロス、ガーナ、アイルランド、レソト、カンボジア、カメルーンなど中位国が月間記録を更新するなど、幅広い国で輸出が好調に推移しています。ニュージーランドやオーストラリアといったオセアニア勢も勢いを増しており、地域的な広がりが今回の底堅さを支えた格好となっています。
一方で、UAE以上に減少幅が大きかったのがパキスタンです。前年同月の4538台から今年は何と17台にまで激減しました。同国では従来、名目上は個人輸入(実態は事業者輸入)が中心でしたが、その個人輸入に対し規制が強化され輸入がほぼ停止しています。短期的には厳しい状況が続くとみられるものの、日本車への根強い需要を考えれば、中長期的には回復の余地があります。
UAEとパキスタンは当面厳しいですが、それ以外の主要国・中位国は総じて堅調であり、全体としては今後も輸出台数の増加が期待できます。
26年3月中古車輸出実績 対前年同月増減台数トップ10

【FOB価格は過去最高、輸出額は史上初の2000億近辺に到達】
3月のFOB平均単価は130万1千円と、これまでの最高値である今年1月の128万円を更新しました。台数が前年を下回ったにもかかわらず輸出総額が1988億円に達し、史上初めて2000億円付近に到達しています。これまでの最高額は25年7月に記録した1711億円であり、今回はそこから約277億円も積み増したことになります。
中古車登録・届出台数月間推移25年vs26年比較

FOB単価を押し上げた要因としては、マレーシアの存在が大きいと言えます。同国の3月のFOB平均は実に524万4千円と、過去最高水準を更新。台数も前年同月比25.2%増の5791台と大きく伸び、輸出額全体を強力に押し上げました。加えて、ロシア(129万4千円)、スリランカ(205万4千円)、ケニア(154万4千円)といった高単価国が軒並み台数を伸ばしたことも大きいと言えるでしょう。
あと今回注目されるべき点としては、UAE向けに輸出されていた“1台1000万円超”の高級スポーツカーがほぼ消えたにもかかわらず、全体のFOB単価が過去最高を更新した点にもあります。以前から絶対数は多くはなかったものの、こうした高額車の消失は通常、平均単価を押し下げる方向に働きますが、それを補って余りあるほど、他国の需要が強かったことを示しています。
ここがPOINT!
地政学リスクが続くなかでも、3月実績は日本の中古車輸出の底力を改めて示しました。今後についても、力強い展開が期待されます。港湾関係者によれば、一部の港では中古車が溢れ、一時的に搬入制限がかかっているのことで、勢いが止まる気配はありません。3月実績は通年でも記録更新を十分に狙えるだけの強さを感じさせる内容だったと言えます。
2026年6月号


