業界レポート7月号③ Vol.80
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本レポートでは、オークネット会員様のビジネスのお役に立てますよう、大きなターニングポイントに差し掛かっている自動車産業にフォーカスした情報をタイムリーにお届けします。
執筆・編集:特定非営利活動法人 自動車流通市場研究所 理事長 中尾 聡
【世界8地域別の中古車輸出実績からみた地殻変動】
米国・イスラエルによるイラン攻撃は、6月17日の「軍事行動の終結」に関する覚書署名により収束へ向かい始めました。しかし最大仕向け国であるUAE向け中古車輸出は依然として機能停止に近い状態が続いています。当初は市場全体への深刻な影響が懸念されましたが、輸出台数は微減にとどまっています。一方で地域別にみると輸出構造には明確な変化が生じており、今回はその実態を整理します。
【台数ではアフリカ・中東欧・西欧が大幅増、中東は急減】
2026年1〜4月の中古車輸出累計台数は55万9780台で、前年同期比4.4%増となりました。全体としては過去最高を更新する勢いを維持していますが、地域別にみると輸出構造は大きく変化しています。
最も深刻な影響を受けたのは、やはり中東地域で、実質的にUAE一国の数字ですが、前年から約5万台減少し、占有率も16.5%から6.8%へ急落しました。その実績も1〜2月分が大半を占め、3〜4月はほぼ停止している状況です。停戦が成立しても物流回復には時間を要し、減少傾向はしばらく続くとみられます。
この大幅なマイナスを補ったのがアフリカ、中東欧・ロシア・西欧の3地域です。アフリカは4万2000台増と突出しており、UAEが担っていたアフリカ向け再輸出の中継機能が、タンザニアや南アフリカへ移行したと考えられます。また、UAE経由でロシアに再輸出されていた高額HV車が、ジョージアやキルギス、西欧のキプロスなどへ振り替わった可能性も高く、これらの地域が大きく伸びています。
一方、アジア地域はモンゴルの規制強化の動きや、実際に規制強化に踏み切ったパキスタンによって減少しています。減少したのはアジアと中東の2地域のみで、その他、北米は前年並み、南米は堅調に推移しています。
世界8地域別中古車輸出台数1~4月累計実績25年vs26年比較※

【FOB単価は全地域で上昇、輸出額はアジアが最大の伸び】
輸出額は大幅に増加し、1〜4月累計で6837億円と前年を大きく上回りました。FOB単価も上昇し、122.1万円と過去最高水準に達しています。ホルムズ海峡閉鎖による原油高で燃費性能の高い車種の需要が高まり、単価を押し上げていることが背景にあります。
台数を伸ばしたアフリカ・中東欧・ロシア・西欧は輸出額も軒並み増加しました。特にアフリカは台数・金額ともに存在感を高め、UAEの穴を実質的に埋める形となっています。
注目すべきはアジア地域です。台数は減少したものの、FOB単価が大幅に上昇し、輸出額はむしろ増加しました。スリランカやマレーシア、バングラデシュなど高額車需要の強い国が牽引したためで、単価は前年比37.7万円増の221.6万円と突出しています。
また、円安も単価上昇の大きな要因です。昨年140円台だった為替が160円超となり、同じ1万ドルの車両でも円換算額が上昇し、FOB価格を押し上げています。こうした外部環境が複合的に作用し、輸出額は多くの地域で大幅に増加しています。
世界8地域別中古車輸出額1~4月累計実績25年vs26年比較※

※アフリカ:タンザニア、ケニアなど37ヶ国 中東欧・ロシア:ロシア、ジョージアなど14ヶ国
西欧:キプロス、英国、アイルランドなど21ヶ国 大洋州:NZ、オーストラリアなど17ヶ国
中南米:チリ、ガイアナ、ジャマイカなど30ヶ国 北米:米国、カナダの2カ国
アジア:スリランカ、マレーシアなど23ヶ国 中東:ほぼUAE 1か国
世界8地域別FOB価格1~4月累計実績25年vs26年比較

ここがPOINT!
GW明け以降、国内主要輸出港では搬入制限が始まっています。背景には、世界的な海運混雑の深刻化があります。ホルムズ海峡閉鎖に伴う迂回航路の増加で航海日数が延び、各国港湾で滞留が発生。日本の港でも回転率が低下し、ふん詰まり状態が続いています。需要自体は旺盛ですが、輸送リードタイムの長期化により、今後は台数が伸び悩む可能性はあります。一方、供給面では環境性能割の廃止を受けて新車販売が回復し、夏頃までは中古車供給が増える見通しです。ただし原油高による新車価格上昇で再び新車需要が鈍化すれば、中古車輸出は再び強含む展開が予想されます。年後半の相場は一段と上昇する可能性が高いのではないでしょうか。
2026年7月号
