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業界レポート7月号① Vol.80

  • 5 時間前
  • 読了時間: 4分


 

 本レポートでは、オークネット会員様のビジネスのお役に立てますよう、大きなターニングポイントに差し掛かっている自動車産業にフォーカスした情報をタイムリーにお届けします。


執筆・編集:特定非営利活動法人 自動車流通市場研究所 理事長 中尾 聡


【新車市場の主要指標からみた中東情勢の影響】


 3月以降の中東情勢の緊迫化が、日本の自動車生産・輸出・販売にどの程度影響を与えたのかが注目されています。ホルムズ海峡の封鎖や物流リスクの高まりにより、中東向け輸出は大きく減少しましたが、国内では環境性能割の廃止を控えた需要の前倒しや新型車効果が追い風となり、生産・販売は想定以上に底堅く推移しました。また、メーカー各社が国内外の需給変動に柔軟に対応したことも、市場の急激な落ち込みを防ぐ要因となりました。3月以降の主要指標が出揃った今、改めて新車市場への影響を整理し、今後のリスクと展望を多角的に検証します。


【3月の自動車生産:中東向け減産を国内需要が吸収】


 2月末のイランと米国・イスラエルの軍事衝突によりホルムズ海峡が封鎖され、中東向け車両は3月から減産を余儀なくされました。トヨタや日産も減産を発表しており、生産実績の落ち込みが懸念されましたが、結果は前年同月比8.9%増の78万8528台となりました。背景には、3月末で環境性能割が廃止されることを見込んだ国内向け生産の積み増しがあります。

 さらに、メーカー各社は国内販売店の在庫状況や受注動向を踏まえ、生産計画を機動的に調整したことで、減産の影響を最小限に抑えることができました。中東向けの減産分を上回る国内需要の前倒しが生産全体を押し上げ、結果として全体の減少を回避した形となりました。


自働車生産台数2026年3月実績(前年同期比)

出所:日本自動車工業会
出所:日本自動車工業会

新車販売:現時点で影響は限定的、価格上昇を通じ秋以降に波及か


 新車販売は5月までの累計で前年同期比102.6%と堅調に推移しました。4月以降は新型車や改良モデルの投入効果に加え、環境性能割廃止前の駆け込み需要が寄与し、中東情勢の影響は現時点では限定的です。また、軽自動車やSUVなど人気セグメントが引き続き好調で、市場全体を下支えしました。

 ただし、今後は原油価格の高止まりや物流コスト増により、メーカーの新車価格引き上げが避けられない見通しです。価格上昇は需要の減速につながる可能性が高く、特に価格に敏感な軽自動車やコンパクトカー市場では影響が顕在化しやすいと考えられます。影響が本格化するのは秋以降になる見通しです。


ブランド別新車販売 2026年3月~5月累計実績(前年同期比)

出所:日本自動車工業会
出所:日本自動車工業会

【中近東向け輸出:大幅減の中でも湾岸諸国向けは供給維持】


 輸出台数は4月分まで公表されており、3〜4月の累計では中近東向けが前年同期比44.4%と大幅に減少しました。ホルムズ海峡が封鎖され、紅海ルートもフーシ派の攻撃リスクが高まったことで、通常航路が使えなかったことが主因です。しかし、この状況下でもUAE向けは1万258台(14.3%増)と増加し、サウジアラビア向けも47%減ながら1万613台が輸出されました。


仕向地域別新車輸出台数 2026年3月~4月累計実績(前年同期比)

出所:日本自動車工業会
出所:日本自動車工業会

 これらは、喜望峰経由で地中海からスエズ運河を通過しジェッダ港へ陸揚げする、あるいはオマーン・マスカット港から陸送するなど、長距離の迂回ルートを活用した結果とみられます。輸送期間の長期化や物流コストの増大は避けられませんが、湾岸諸国は日本車にとって極めて重要な市場であり、供給を途切れさせればシェア喪失につながります。

 そのためメーカーは、コスト増を許容してでも供給維持を優先したと考えられます。また、原油価格の高騰を背景に、燃費性能に優れるHV車の需要が高まり、欧州・中南米・アフリカなど他地域の輸出台数増加にも寄与しました。結果として、全体の輸出台数は減少したものの、地域ごとの需要構造の変化が鮮明に表れた期間となりました。


ここがPOINT!


 米国とイランは終戦合意に至りましたが、湾岸諸国の石油インフラは大きな被害を受けており、原油価格が衝突前に戻るには時間がかかる見通しです。自動車生産に不可欠なナフサの供給や価格も不透明で、当面はコスト上昇が続くとみられます。こうした状況から新車価格の上昇は避けられず、販売への影響は今後本格化する可能性があります。生産・輸出・販売の各指標は足元で底堅さを保っていますが、価格転嫁が進む秋以降は需要減速リスクに注意が必要です。

2026年7月号

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