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業界レポート12月号 Vol.49

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  • 2023年12月1日
  • 読了時間: 10分

更新日:2024年3月4日



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本レポートでは、オークネット会員様のビジネスのお役に立てますよう大きなターニングポイントに差し掛かっている自動車産業にフォーカスした情報をタイムリーにお届けします。

執筆・編集:特定非営利活動法人 自動車流通市場研究所 理事長 中尾 聡



▼目次


【2023年 新車業界振り返り】


【2023年 中古車業界振り返り】


【アフリカ地域の更なる躍進を予感させる新サービスに注目】


1 自動車流通のトレンド

【2023年 新車業界振り返り】


 早いもので、今年も一年が終わろうとしています。2020年以降、パンデミックに見舞われて、低迷していた新車業界でしたが、今年はやっと回復に向かった一年となりました。とは言え、パンデミック前の正常値には及ばず、自動車生産では中国に抜かれ世界一位の座から陥落、また新車販売も昨年世界3位の座をインドに奪われましたが、それを奪還するまでには至っていません。そんな回復途上となった新車業界の一年を、今回は改めて振り返ってみたいと思います。


【自動車生産】

  20年から生産の足かせとなっていた半導体不足は、自動車メーカー各社が取り組んできた設計や調達の工夫も奏功し、あくまでも自流研の見込みですが、前年比で14.2%増の895万台前後の生産台数になりそうで、前年を大きく伸ばすと思われます。しかしながら、健全な指標と言われる1000万台には遠く及ばず、パンデミック前の19年実績にも届きません。それどころか危険水域と言われる900万台も若干下回りそうな状況です。これは国内外の需要に対して、未だ国内の生産ラインが完全な回復には至っていないことを示しています。

 また世界各国が取り組みを強化させている電気自動車についても、前年に対して倍増の10万台前後にはなりそうですが、あくまでも軽自動車中心であり、全生産台数に対して、僅か1%に過ぎません。

 以上のように、自動車生産に関しましては、前年を大きく上回ったとは言え、旺盛な需要を満たすまでの供給は、未だに至らなかった一年だったと言えます。

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直近10年間の自動車生産台数実績推移


【国内新車販売】


 23年新車販売台数の実績は輸入車も含め、10月までの累計ですと400万5157台で前年比が15.1%増となっていますが、残り2ケ月については、トヨタ自動車の国内工場稼働停止による登録車全体への波及が市場全体に響く可能性もあり、これまでの前年比実績を割り込んで10%前後の増加で推移すると予想されます。従って、通年では480万台弱になる見通しですが、これは危険水域の450万台は大きく上回り、健全な指標500万台にかなり近づいています。

 このように好調な一年ではあったのですが、3年間で消失した需要を賄うまでには至りませんでした。今後、生産ラインが正常化し、挽回生産に転じれば、消失した需要も取り込んで販売台数は増加していくと期待できます。

 一方、昨年世界3位の座を日本から奪ったインドは、今年乗用車だけでも500万台を超えてきそうです。人口は中国を抜いて世界第一位になりましたが、一世帯当たりの乗用車保有率が未だ8.5%で、(日本は103%)今後、経済発展による中間所得層の増加に伴い、拡大余地は大きいと考えられます。逆に日本は人口減少に歯止めが掛からない状況ですから、益々引き離されていくものと思われます。

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直近10年間の新車販売台数実績推移

【新車輸出】


 年初こそ、新車ディーラーのプレッシャーを受け、自動車メーカー各社は輸出を控え、国内供給を優先するとしていましたが、結果的には前年比で国内販売(14.2%増)とほぼ同じ14.3%増で、輸出台数としては前年の381万台を55万台ほど上積みし、436万台前後になりそうです。新車販売台数は輸入車が約30万台含まれますので、実質国産車だけだと450万台となりますので、台数の差もさほどではありませんでした。

 また為替レートが年初130円であったのが、現在150円前後になっていますから、相当な増収増益になったものと推測されます。ですから新車輸出については、危険水域ラインは越えることはできませんでしたが、内容的には絶好調な一年であったと言えます。

 とは言え、最近報道で何かと「新車輸出トップの座から陥落」との話題が取り上げられているように、日本以上に中国の勢いは凄く、恐らく今年は中国にトップの座は明け渡すことになりそうです。


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直近10年間の新車輸出台数実績推移

ここがPOINT!


 新車業界は、現在のデータを見る限り、概ね回復傾向に向かっていると言えますが、しかしデータには反映されない気になる情報もあります。それは前回のレポートでも紹介しましたが、ナビゲーションやエアロパーツなどディーラーオプション系が遅延し、納車が1~2ケ月程度遅れてしまっていることです。これは次項でも紹介しますが、中古車流通にも影響が及ぶため、今後、注視していく必要がありそうです。


2 中古車流通のあれこれ

【2023年 中古車業界振り返り】


 今年の中古車業界は何と言っても、大手中古車事業者らによる保険金の不正受給に端を発した数々の問題によって、大きく揺れた一年でした。かつて、修復歴の偽装やメーター改ざんなどで、消費者からの信頼を損ねるような事件はありましたが、よもやこれほどまでに社会的に信用を失墜させることはありませんでした。そういった意味で、中古車業界にとっては、大変厳しい一年でしたが、ここで改めて振り返ってみたいと思います。


【中古車登録・届け出台数は5年ぶりにプラス成長】

 23年通年での、中古車登録・届け出台数は、前年比1.9%増の642万2197台と見込まれます。内訳としては、登録車が354万4512台(前年比101.4%)で、軽自動車が287万7685台(同比102.5%)と若干、軽自動車の方が好調だったようです。これはいずれも10月までの実績をベースに、残りの2ケ月を自流研が独自に計算した数値を加えた、あくまでも予測値ではありますが、今年は何とか5年ぶりにプラス成長に転じると思われます。ただ平時の19年実績と比較すると未だに大きく乖離しています。

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中古車登録・届け出台数 平時vs昨年vs今年 

 あと意外にも、不正受給が大きく社会問題化した8月以降、前年に対し、台数は増加傾向に転じています。

登録・届け出数=小売台数ではありませんから、一概には言えませんが、問題を起こした当事者が大きく台数を減少させた分を、新車ディーラーの中古車部をはじめ、問題がなかったブランド力のある中販店が吸収し、更にそこへ上積みができた販社が比較的多かったようです。実際に8月以降、「来店数や問い合わせ件数は確かに減ったが、逆に契約件数は増えた」との声が多く聞かれました。

 ただ、前項で紹介した国内新車販売は前年比で114.2%と二桁の伸長でしたから、本来であれば、それだけ下取り車の発生量も増え、新車同様に中古車も増えてもおかしくないのですが、そうならなかったのは、先述した通り、登録はできても納車ができず、目詰まり状態になっていることも起因していると思われます。


【中古車登録・届け出台数【オークション実績は15年振りの高水準】


 23年のオークション実績についても、9月までの実績をベースに算出した予測値ですが、出品台数が811万2362台(前年比117%)で、成約台数513万7766台(前年比109.5%)と、いずれも平時の19年実績を大きく上回り、15年振りの高水準となりそうです。

 成約率については、さすがに前年を4.3㌽下げ63.7%ですが、相場を示す平均単価は730千円と歴史的な高騰となった昨年(742千円)と比較しても何ら遜色のない実績です。これだけ高実績だと、不正問題による影響は限定的だったようです。ただ、不可思議なのは、新車が14.2%増だったので出品台数が増えて当然ですが、再三申し上げていると通り、納車遅れによる目詰まりは生じていますし、中古車登録・届け出数と比較すると大きくかけ離れています。

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 この要因としては、成約率が幾分下がったことで再出品車が増えたことや、中古車輸出が絶好調であったことなどが挙げられますが、決定的な要因がどこにあるのかは正直掴めません。来年初旬に実績が確定した段階で、改めて分析をし、後日紹介してみたいと思います。

 いずれにしましても、中古車業界としましては、世間を震撼させるような事件を起こしてしまいましたが、それに反して、あくまでも現状のデータでは、順調な一年であったと言えそうです。

ここがPOINT!

 新車ディーラーに取材をしてみますと、ここにきて目詰まり状態は解消されつつあるとのことです。今後、これがオークションに出品されるようになり、供給量は増えていくと予想されますが、それに見合った需要があるかと言えば、少々疑問が残ります。中古車輸出が依然好調なことから、暴落することはないと思いますが、下降傾向に突入するのではないかと思われますので、今後の相場の動向にご注意ください。


3 どうなってるの中古車輸出

【アフリカ地域の更なる躍進を予感させるサービスに注目】


 半世紀以上の歴史のある日本の中古車輸出にとって、2023年は最高の一年でした。今年の場合、多くの仕向国が好調だったため、あまり目立ってはいませんが、アフリカ地域各国の伸長率は依然として高い傾向を示しています。再三、このレポートでも、この地域が今後の中古車輸出の核になると紹介していますが、それを確信させる新たなサービスがタンザニアでスタートしました。今回はそのサービスについてレポートしてみます。


【保税ヤードを活用したトータルサポートサービスとは】


 その注目のサービスをリリースしたのは、タンザニアのダルエスサラームに現地法人を持つ、セントパーツ株式会社(本社:岐阜県羽島市 種谷謙一社長)です。同社は日本の自動車リサイクル事業者ですが、15年にタンザニアへ進出し、自社で日本から輸出した中古部品を現地で直接、販売を開始し、3年後には整備事業も手掛け、さらに昨年22年には日本から輸入した中古車のショールームもオープンするなど、僅かな期間で、多岐に渡り事業の展開を果たしています。一方、その実績が評価され、JICA(国際協力機構)から、タンザニアにおける自動車整備士育成と整備工場網構築のための案件化調査も受託しました。ちなみに種谷社長は日本中古車輸出業協同組合の理事でもあります。

 具体的なサービス内容ですが、同社がタンザニアに保有する保税ヤードを活用した日本の輸出事業者向けトータルサポートサービスです。もっと詳しく説明しますと、日本の事業者は中古車を現地に送るだけで、輸入検査手配から税金支払いなど輸入手続きを代行、またユーザーへの対応(登録&納車)、さらに納車整備からアフターメンテナンス、代金回収まで、輸入に関するすべてを代行するサービスです。

 また、仮にユーザーが決まっていなくても、同社が現地媒体を活用したショールームへ展示することが可能で、その車両の営業まで代行してくれるというのです。(営業代行は別途費用が発生)但し、条件としては、輸入者がセントパーツ現地子会社になることが前提となります。


【アフリカ地域の流通形態の変化をいち早くキャッチし新たなサービスを】


 このようなサービスをリリースする背景には、近年、アフリカ地域、それも東アフリカに見られる傾向ですが、輸出相手が業者ではなく、エンドユーザーとなってきていることが挙げられます。エンドユーザーが増えてきた要因としては、日本国内での輸出WEBの普及とアフリカで若者を中心にスマホが普及したことが考えられます。今や業者を介さずとも、スマホから直接日本の輸出WEBにアクセスし、多くの中古車の中から、お気に入りの1台を探すことができ、尚且つ、業者が介在しない分、安く購入できるとし、人気が高まっているからです。

 しかしながら、その一方では多くの問題が発生していることも事実です。日本側の業者にとっては、相手がユーザーであることから代金回収のリスクや、プロではないことで、車両に対する必要以上のクレームの発生などがあります。反対に現地側のユーザーにとっては、実際にあったことですが、代金を送金したものの、車両が届かない、車両は届いたが事前の情報とは異なり状態が極めて酷い、また通関業務や車両検査、国内登録などの作業が不慣れで対応に苦慮するといったような問題が発生しています。

 一言で言えば、これらの問題をすべてクリアにするのが、今回のサービスです。今後このサービスが普及していけば、先述したようなリスクをヘッジして、元々ポテンシャルのあるアフリカ地域での需要は加速度的に高まっていくと予想されます。


ここがPOINT!


 新車の項目でも紹介していますが、新車輸出に関しては、中国の台頭により、世界第一位の座を明け渡してしまうのは確実の状況ですが、中古車輸出に関しては、今回紹介したサービスをはじめ、目まぐるしく変化する流通に対応した新たなサービスが続々と誕生するバックグラウンドがあり、今後も世界第一位の座は揺るがないものと思われます。



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セントパーツ社タンザニアのショールーム

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セントパーツ社タンザニアのスタッフの皆さん

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