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業界レポート1月号 Vol.62

更新日:1月14日


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オークネットの会員の皆様、新年あけましておめでとうございます。

今年は新車市場が回復を遂げ、自動車産業全般が大いに飛躍する一年になると確信しております。

会員の皆様方にとっても、素晴らしい一年になりますことを心よりお祈り申し上げます。


執筆・編集:特定非営利活動法人 自動車流通市場研究所 理事長 中尾 聡


▼目次


2025年新車市場の展望


2025年中古車市場の展望


2024年中古車輸出の振り返り


1 自動車流通のトレンド

2025年新車市場の展望


 新車市場は世界的なパンデミックが収束に向かった23年は大幅に回復し、その勢いで24年はパンデミック以前まで回復するのではと期待されましたが、生憎、年初から、自動車メーカー各社の認証不正問題によって、再び危険水域に突入してしまいました。今年25年に関しましては、メーカー各社の奮起を期待し、希望的な観測になりますが、新車市場の展望についてレポートしてみます。


【自動車生産】


 昨年末、ホンダと日産自動車が経営統合に向けて協議を進めていることが判明しました。これに日産が筆頭株主になっている三菱自動車も加わる可能性が高いと言われています。この統合が実現すれば、世界3位の巨大自動車グループが誕生することになりますが、これによって巨額の開発費などを分担するとともに、互いの強みを生かして競争力が強化されます。実際には、まだ基本合意もされてなく、具現化されるのは先の話ですが、方向性が明確になれば、少々強引ですが、今年から各社ともに自動車生産台数の上積みが期待できます。

 また24年は認証不正問題で、生産台数が30万台前後、前年から落ち込むと予想されているトヨタに関しても、25年は是が非でも回復に向かうはずですから、通年での自動車生産台数は24年対比で8.4%増の900万台(国内向け450万台+輸出450万台)は期待できると分析しています。


19年~23年生産・国内販売・輸出台数実績の推移と24年予測と25年見通し


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出所:19年~23年は日本自動車工業会


※24年は日本自動車工業会が発表した国内新車販売が11月、新車輸出が10月、自動車生産は9月までの実績。残りを自流研による推定値を加算した予測値、25年はあくまでも自流研独自の見通し。国内新車販売には、新車輸入車が含まれる(約30万台)


【国内新車販売】


 25年の国内新車販売は、国内生産分450万台+輸入車30万台の480万台(24年対比7.9%増)と見通しています。前回のレポートでも記述しましたが、24年は認証不正問題によって、国内向けではトヨタが20万台、ダイハツが23万台ほど販売台数が減少しそうですが、25年はトヨタについてはこれを回復し、さらに上積みを図るとみられ、ダイハツは100%の回復は難しくとも、23年対比(約60万台)で9割方は(55万台前後)回復するとみられます。

 電動車については、24年に初めてハイブリッド車(HV)が200万台超えを達成しました。25年は前年をさらにクリアし、250万台前後まで到達するのではないでしょうか。但し、電気自動車(EV)は減少傾向にあり、これは25年も継続しそうです。わずかに増加しているプラグインハイブリッド車(PHEV)は三菱自動車の「アウトランダー」の新型車効果で、25年もわずかに増加しそうです。

 近年円安基調で推移しているため、輸出には有利ですが輸入に関しては不利な状況にあるものの、確実に新車輸入車が台数を伸ばしています。そこには安定した輸入車需要があり、25年も30万台以上の需要は見込まれています。


【新車輸出】


 25年の新車市場の見通しとして、一番難しいのが新車輸出です。輸出台数の半数を占めるのが、米国と中国ですが、その米国では、トランプ次期大統領がすでに日本に対しても関税の引き上げを明言していますから、新車輸出にブレーキが掛かってしまいます。また日本以上に大幅に関税が引き上げられる中国は、それでなくとも景気が低迷している中、大打撃になりそうです。中国への輸出台数は米国に比較してさほど多くはありませんが、米国だけでも150万台以上は年間で輸出されていますので、どのような影響が出るのか不安が募ります。

 為替も基本的には米国が金利を引き下げ、日本が上げるので、金利格差が縮小し、円高に振れると思いますが、昨年も同じようなことを言いつつ、円高に振れたのは一時的なことでしたから、何とも言えませんが、いずれにしても新車輸出に関しては、不安材料が満載で、見通しが大きく崩れる可能性があります。


ここがPOINT!

 

 先月、日本総合研究所が公表した24年の日本人の出生数は「初めて70万人を割り68.5万人になる」とのことです。近年、出生数が下げ止まらず、人口の減少が止まりません。これによって、明らかにマーケットは縮小していきます。このところ、全国各地で、トヨタ新車ディーラーの閉店・統廃合を目にするようになりました。これもマーケットの縮小を見越した動きであり、業界全体でこの傾向が進むと思われます。


2 中古車流通のあれこれ

【2025年中古車市場の展望】


 25年の中古車市場は、前項で紹介した通り、新車販売が回復すると思われるので、中古車(下取車)の発生量も増加に転じ、昨年までのような、異常とも言える中古車相場の高騰は落ち着きを取り戻すとみています。ただ、今年も中古車輸出の動向には大きく影響を受けるとは思います。今回はオークション流通のこれまでの動向から、25年の中古車市場を展望してみます。


オークション出品台数は拡大が期待されるものの、輸出需要も拡大。

熾烈な競争は25年も継続


 25年の新車販売は、23年実績の480万台まで回復すると見込まれますので、中古車の発生量も同様に増加し、オークションの出品台数も23年レベルの800万台まで回復を遂げると見通しています。

 一方、成約率は若干下がりますが、成約台数は増加すると思われます。その背景には今年、低年式車需要の高い仕向け国の輸出台数が一気に増加することが見込まれるからです。24年は高年式車需要が高かった割に、低年式車の輸出需要は減退しました。その要因は、海上輸送の高騰です。特に低年式車はコンテナにバンニングして輸出されますが、そのコンテナが不足し、価格が垂直的に上昇してしまって、極端な話ですが、車両代金より輸送コストの方が高くなり、需要自体はあっても輸出できなかった状況がありました。しかし、今年はコンテナを中心に海上輸送の供給量が拡大し、それに伴って、価格も下がりますから、確実に低年式車の成約が増加します。

 高年式車も年初はロシアのルーブル安によって、多少減少するでしょうが、しばらくすると再び需要は高まります。これで割りを食ってしまうのが、国内の中古車小売店です。直取、直販できるような新車ディーラーや、リース&レンタアップを転用し地産地消できるような大手小売店は何とか凌げても、100%オークション仕入れを頼りにしているような小売店は、今年も引き続き、強力な輸出バイヤーを相手に熾烈な競争を覚悟しなければならないと思われます。


オークション 2023年実績vs2024年予測 2025年見通し

出所:㈱ユーストカー
出所:㈱ユーストカー

※2024年見込は9月までの実績をもとに自流研が独自に計算。2025年は、あくまでも自流研の独自の見通し


【車両の高齢化は進むが、中古車相場は依然高値が継続】


 前回のレポートでも紹介していますが、新車ユーザーが次の新車に乗り換えるまでの期間を示す代替サイクルは、近年長期化し23年実績では9.1年まで延びました。要するに中古車で流通する頃にはすでに9年落ちになっていると言うことです。これによって、人間の平均年齢に相当する車齢も9.2年(同年)、平均寿命に相当する使用年数も13.42年(同年)と年々高齢化が進んでいます。ですから、本来であれば、中古車相場もそれに比例して下がっていくものなのですが、パンデミック以降は逆行して、この5年間で倍以上に跳ね上がると言った異常な状態が続いています。これは再三申し上げていますが、パンデミックによって、世界各国で新車販売が低迷し、その代替需要として、メイドインジャパンでユーズドインジャパンの高年式の中古車が求められた結果だと言えます。さすがに今後は24年実績のような相場にはならないと思いますが、パンデミックを機に、改めて日本の中古車が見直されていますから、しばらくの間、高値相場と台数の増加は継続されると思われます。その分、その他の国内中古車市場には影響が及ぶものと考えられます。



中古車相場の年間推移(1994年~2025年)

出所:㈱ユーストカー
出所:㈱ユーストカー

※2024年見込は9月までの実績をもとに自流研が独自に計算。2025年は、あくまでも自流研の独自の見通し


【訂正とお詫び】


 前回号の中古車の項目にて表記した表②23年実績の「オークション出品台数」に誤りがございました。


誤)7,963,807台

正)7,063,807台


 なお、同じ表に併記している成約率や前年比につきましては、誤りがないことを確認しております。

 会員の皆様には大変ご迷惑おかけしましたことを深くお詫び申し上げます。


※現在掲載されている12月のレポート数値は修正済の数値です。


3 どうなってるの中古車輸出

2024年中古車輸出の振り返り


 2024年は世界情勢の混乱による海運事情の不安定さと、国内においては自動車メーカー各社の不祥事によって、新車販売が低迷、中古車発生量が減少するなど、中古車輸出にとっては波乱の一年となりました。

 この原稿を執筆している段階では、財務省の貿易統計が10月までの累計実績しかなく、残り2ケ月は、あくまでも筆者の予測値となりますが、それを基に24年通年での傾向や主要仕向け国の動向などを振り返ってみます。


【2024年の中古車輸出台数は年後半に失速、前年割れの予測】


 24年前半の中古車輸出は、世界の海運事情が緊迫化していましたが、それでも3月までの累計では前年を2割近くも上回って、2年連続で過去最高を更新するのではと見られていました。

 しかし、年中盤に差し掛かると、さすがにこの影響が出始め、加えて5月14日にバイデン大統領が対中関税を大幅に引き上げると発表すると、その途端、駆け込み需要が発生、実際に引き上げとなった9月27日までの期間、コンテナが一気に減少してしまい、コンテナ運賃は垂直的に上昇。また日本からの配船も大幅な減少を生じさせたことで好調だった流れに、一転して水を差しました。実際に5月までは大幅に前年を上回っていましたが、前述の駆け込み需要が終了する9月までの間は、ほぼ前年を下回り、10月になって、やっと駆け込みが解消されると、再び前年を上回るまでに回復しています。

 わかりやすい数値として、過去最高を記録した前年に対して、今年、月毎の累積実績の増加率の推移を見てみると、3月時点での累計実績が19.6%増であったのが、4月には17.2%増、5月13.1%増、6月には一桁台になって6.9%増まで減少、7月3.8%増、8月3.4%増、9月には2.1%増まで落ち込み、10月にやっと2.3%増と下げ止まっています。それでもこの流れで行けば、24年の実績は僅かながら、前年を上回るのではと、多くの識者や業界関係者、そして筆者すら最近まで期待感を持っていた。しかしながら、11月以降、どうやら輸出台数は落ち込む気配が漂っています。

 その要因の第一としては、11月21日、米財務省がロシアのガスフロムバンクなどの銀行に追加制裁を行った結果、一気に㍔安となって、非規制対象車(非規制車)、規制対象車(規制車)ともに同国向けの中古車輸出にブレーキが掛かってしまいました。さらに、25日には、トランプ次期大統領が中国・カナダ・メキシコに一律追加関税を発表すると、再び駆け込み需要が発生し、現在、海上運賃が上昇、手配も厳しくなり始めています。この状況では、残念ながら、通年で前年割れが生じると分析しています。


【発生が数少ない高年式車を巡って、

多くの仕向け国と国内小売業者との間で熾烈な争奪戦の結果。。。】


 仕向国別にみると、アラブ首長国連邦(UAE)が前年に記録した過去最高値を塗り替え、22万台で4年ぶりにトップを奪還しそうです。しかし、これは明らかに“表向き”のトップと言わざるを得ません。それは2位に陥落するとみられるロシアが、非規制車だけで20万台を記録しましたが、これにUAEをはじめモンゴル、キプロス、ジョージア、韓国などを経由して再輸出された規制車が、あくまでも推定ですが5万台前後は存在しています。従って、非規制車の20万台にこれを加えると25万台となり、事実上のトップは4年連続でロシアということになります。ただ、前項でも述べたように11月から㍔安になって、非規制車、規制車ともブレーキが掛かっています。港湾関係者に話を聞くと、「港へのロシア向け搬入台数が2~3割減少している」との声が多く聞かれ、中には「半減した」との声もあります。ただ、これは一過性のことだと認識されます。ウクライナ侵略以降、何度も制裁を受け、その直後は一時的に減少しますが、同国の旺盛な需要を背景に、数ケ月経つと再び台数を戻していることからも、来月2月辺りから買いが活発になると予想されます。

 3位は初めて10万台超えし、長年3位の位置をキープしていたニュージーランド(NZ)を抑えたモンゴル。ただ同国の場合、国内消費だけで10万台は異常です。またFOB価格の高騰をみても、数万台はロシアへ再輸出されていると見込まれます。

 これ以降の仕向け国で特筆すべきはマレーシアです。台数が過去最高を記録するとともに、FOB価格も記録を更新しそうです。直近10月の瞬間風速では504万5千円を記録しました。極端な言い方になりますが、一年落ちの40系アルファード/ヴェルファイアが根こそぎマレーシアに輸出された感が否めません。


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※10月迄の累計数字は財務省貿易統計による実績値

※24年見込は自流研の独自調査による予測値

※24年の数字で赤字になっているのは過去最高値が予想される国


ここがPOINT!


 24年の傾向として、国内では新車メーカーの認証不正問題によって、新車供給が低迷したことで中古車発生量が減少、その中でも特に数少ない高年式車を巡って、ロシア(規制車)やマレーシアまたバングラデシュ、シンガポールなどの国々と国内の小売業者が熾烈な争奪戦が行われた結果、国内の中古車相場は異常とも言える状態を生み出しました。


2025年1月号

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