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業界レポート2月号 Vol.63

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  • 1月28日
  • 読了時間: 10分

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本レポートでは、オークネット会員様のビジネスのお役に立てますよう

大きなターニングポイントに差し掛かっている自動車産業にフォーカスした情報をタイムリーにお届けします。


執筆・編集:特定非営利活動法人 自動車流通市場研究所 理事長 中尾 聡


▼目次


2024年世界各国及び地域の新車販売台数実績トップ5と日本国内人気車ランキングトップ20


中古車輸出台数が国内中古車小売台数を上回るクロスポイントが前倒しに!?】


2025年中古車輸出の展望


1 自動車流通のトレンド

2024年世界各国及び地域の新車販売台数実績トップ5と日本国内人気車ランキングトップ20


 今年に入って、日本を含め世界の国や地域における2024年の新車販売台数実績が明らかになっています。また日本国内での24年新車販売ランキングも発表されました。そこで今回は、世界の販売実績トップ5の国と地域並びに国内人気車トップ20についてクローズアップしてみます。


【24年世界の自動車販売で上位国は軒並み前年を上回るものの、唯一日本は前年割れ】


 24年世界で最も自動車を販売した国は中国で、これにより17年連続でトップの座を堅持しています。ただ、中国の発表の仕方として、新車輸出台数(586万台)も含めて新車販売台数(3143万6000台)としていて、日本の報道を見ても、いかにもこの台数が中国国内で販売されたかのような錯覚に陥ってしまいますが、実質は表に示した数値となります。とは言え、2位以下を大きく引き離しています。ちなみにNEV(新エネルギー車HVは含まず)の比率は輸出も含めて、40.9%を占め、前年より9.3%上昇しています。

 2位の米国は、年終盤の数ケ月が好調だったことで、前年を2.2%上回っています。EVの販売台数は130万1411台となり、3年連続で増加しましたが、伸び率は鈍化しました。その要因は、価格の高さと充電インフラの不足です。販売全体に占めるEV比率は、未だ僅か8.2%と1割に達しません。

 3位の英国を含めた欧州(EU)の自動車販売台数は微増にとどまりました。これは持続的なインフレや高金利、またドイツなどでEVに対する補助金制度の廃止で、EV販売が低下していることが背景にあります。

 4位は成長著しいインドがSUVの販売が好調だったこともあり、前年比2.9%増の522万6784台で、日本を3年連続で上回り、世界4位を維持しています。

 以上の上位4ケ国(一部地域)がすべて前年を微増であっても上回っているのに対し、唯一、前年を大きく割り込んだのが日本です。これは偏に、自動車各メーカーの不祥事によって、一定期間出荷停止を余儀なくされたことによるものです。


2024年世界各国及び地域の販売台数実績トップ5


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出所:中国自動車工業協会・モーターインテリジェンス・欧州自動車工業会(英国含)・インド自動車工業会・日本自動車工業会



【24年人気車ランキングトップ20】


 24年の登録車と軽自動車を含めた新車販売車名別販売ランキングでは、前年実績を下回りながらもホンダ「N-BOX」が3年連続の首位となりました。2位には、多彩な車型で幅広い需要を取り込み、登録車として17年ぶりの首位に立ったトヨタ「カローラ」が入りました。「カローラ」は24年春の一部改良によって販売を伸ばしています。ただ、売れ筋はSUVで販売の約5割が「カローラクロス」でした。昨夏に出荷が一時的に止まったトヨタ「ヤリスクロス」の含まれる「ヤリス」は3位に後退しましたが、9月に生産が再開され、10月以降の単月ランキングでは3カ月連続のトップとなり巻き返しています。

 4位以降で特筆すべきは、派生モデルの追加によって前年同比で35.5%増と躍進したスズキ「スペーシア」、また新型車効果が発揮された9位のホンダ「フリード」や商品改良した11位の日産「セレナ」が健闘しました。

 逆に認証不正によって、出荷停止になったトヨタの「シエンタ」「ヴォクシー」「ノア」「ルーミー」、ダイハツの「タント」やランク外ですが「ミラ」「ムーブ」などが大幅な減少となり大きく影響を受けました。


2024年車名別ランキングトップ20


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出所:日本自動車販売協会連合会・全国軽自動車協会連合会


ここがPOINT!

 

 24年新車販売台数は、台数にしますと前年に対して実に35万7592台も減少しました。そのうち出荷停止期間が長かったダイハツが22万7872台、トヨタが22万2524台、合わせて45万台も減少しています。要するに、それだけ販売機会を消失させたことになります。しかし25年については、余程のことがない限り、この分を巻き返し、全体で一昨年(23年)の480万台まで回復すると筆者は見込んでいます。世界各国では、パンデミックから回復し、ほとんど国が上昇傾向にあります。そのような中で、日本だけが取り残されることがないことを期待したいところです。


2 中古車流通のあれこれ

【中古車輸出台数が国内中古車小売台数を上回るクロスポイントが前倒しに!?】


 昨年末、厚生労働省が11月までに公表した人口動態統計のデータをもとに、調査機関が推計した2024年の出生数予測は、遂に70万人を割り、68万5千人になると発表しました。日本の未来におけるマーケットの縮小がより深刻になっています。一方、次項でも紹介していますが、中古車輸出は絶好調で、この勢いは今後も継続します。この状況では、筆者が以前から掲げている中古車輸出台数が中古車小売台数を上回るクロスポイント2030年説が、前倒しするのではないかと考えています。今回はこの件についてレポートします。


【歯止めが掛からないマーケットの縮小】


 初めて普通自動車の免許を取得し、新・中ともに自動車のファーストコンタクトユーザーになり得る、マーケットにおいては貴重な新成人の25年の人口(24年1月~12月に18歳になる人口)は、総務省の人口統計によれば、喜ばしいことに前年を3万人に上回り、109万人となりました。ただ、残念ながらこの数値はピークアウトで、今後は毎年減少し、18年後には約4割減の70万人を切ってしまいます。要するに今後は確実にマーケットが縮小することを意味しています。

 ちなみに半世紀以上も前の63~65年の18歳人口は260万人を超えていました。それと18年後を比較すると、何と75%近くもの減少となります。

 今後、この傾向はどう足掻いても回避できることではありません。このように新規ユーザーの確保が難しくなっていく中、いかに大事な管理ユーザーを囲い込んでいくかが、今後重要になってきます。釈迦説で恐縮ですが、これまで通り中古車の販売だけで、事業の展開をしていても淘汰されてしまうだけです。積極的に買取や修理・整備・車検・保証などを展開し、トータル的にサポートし、管理ユーザーを一人でも取りこぼさない取り組みが求められるのではないでしょうか。


日本の出生数の推移

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出所:厚生労働省



【クロスポイントは190万台で1年前倒しの2029年か!?】


 日本の人口が減少しているのに対し、世界の人口は毎年1億人近く増加しています。それに比例して、日本の中古車需要も年々高まりを見せています。詳しくは次項で紹介していますので、ご覧いただくとして、中古車輸出は今後も拡大が続き、29年には190万台に到達すると見込まれます。

 一方、21年をピークに急激に台数が激減している中古車小売台数は、28年に200万台を割り込み、29年には190万台まで減少すると見ています。従って、これまで200万台で30年がクロスポイントとしていましたが、1年前倒しになりそうな気配です。これは国内中古車小売にとって、深刻な状況に陥っていると言えるのではないでしょうか。


中古車相場の年間推移(1994年~2025年)

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出所:財務省貿易統計 リクルート



ここがPOINT!


 先般、某大手中古車事業者の経営幹部の方の話として、興味深い話が聞けました。それはマーケットが縮小していく中での新規出店についてですが、今後、公共交通機関が充実している首都圏への進出は控え、生活手段として車が不可欠な地方へ進出を強化し、それも県庁所在地があるような都市や、第2、第3の都市を敢えて避け、第4、第5の都市に小規模店舗で進出するそうです。その理由としては、端的に言って、「当該地域ではブランド力のある大手同業他社との競合を回避できるから」とのことでした。実際に近年はトライアルを実施し、在庫回転率の速さ、収益性の高さが証明されているそうです。


3 どうなってるの中古車輸出

【2025年中古車輸出の展望】


 この原稿を作成している段階(1月中旬)では、財務省の貿易統計が未発表のため、正確ではありませんが、2024年の中古車輸出実績は23年に記録した過去最高の154万台に、ほぼ並ぶ勢いで、2年連続で高水準を維持することは確実視されています。

さて25年はどうなるでしょうか。結論から先に言えば、好調だった23年、24年の記録をさらに塗り替える年になると筆者は見ています。今回はその根拠について、説明してみます。


【昨年混迷を極めた海上輸送は回復を遂げ、中古車輸出に追い風】


 24年は結果的には好実績となりましたが、前回号でも紹介したように極めて厳しい市場環境だっただけに、大いに健闘した一年であったと言えるでしょう。

 25年については、この昨年阻害要因となった諸問題が、ほぼ解消される見通しで、中古車輸出に立ち塞がるものはほとんどなく、大きく成長が期待できると見込んでいます。

 具体的に説明します。まず、昨年は年初から中東情勢の緊迫化により、スエズ運河が、またエルニーニョ現象によってパナマ運河と、世界の要衝である二大運河で通航に制限が生じ、これによって、運航期間の長期化、延着、運賃上昇と言った問題に直面しました。さらにコンテナ輸送に関しても、米国の前大統領と現大統領が関税の引き上げを表明する度に駆け込みが発生して、コンテナ不足が起こり、一時コンテナ運賃が垂直的に上昇する場面もあり、低年式車を輸出するような仕向け国では、車両代金よりもコンテナ運賃の方が高くなるようなケースも多々見受けられました。

 しかし今年については、1月19日にイスラエルとイスラム組織ハマスとの間で6週間の停戦合意が締結され、その後も恒久的な終結が見込まれることから、スエズ運河の航行も正常に、またパナマ運河も水源確保を進めたことで正常化すると見られています。一方、コンテナも未だ駆け込み需要は散見されますが、いずれ早晩、正常化し逆に供給過多に転じるとみています。以上のように、昨年は混迷を極めた海上輸送ですが、今年は一転して、自動車専用運搬船を含めRORO船やコンテナ船ともに総じて供給は十分に賄え、輸送価格も下落すると思われるので、中古車輸出にとっては追い風になるでしょう。特にアフリカや中南米など低年式車需要の高い仕向け国の台数が増加すると見込まれます。


【国内の中古車発生量は拡大し、中古車相場は下降するも輸出台数は拡大】


 昨年、中古車輸出成長の阻害要因となったもう一つの問題は、自動車メーカー各社の不祥事による新車販売の低迷に起因する中古車発生量の減少です。

 しかし25年については、余程のことがない限り、新車販売台数は一昨年(23年)の480万台まで回復すると筆者は見込んでいます。そうなると中古車発生量も拡大し、仕入れの場であるオークション流通量(出品台数)も一昨年の800万台レベルまでに回復するはずです。従って、これまでのような国内小売バイヤーを交えた輸出バイヤー同士の熾烈な競争は緩和し、異次元であった中古車相場も落ち着きを取り戻すとみています。しかし、再三述べているように低年式車の落札は増えるので、成約率は記録的な実績となった昨年の70%は上回るものと予想しています。

 これまでは、良い材料のみ述べてきましたが、懸念材料が無い訳でもありません。為替の問題とロシアの不調です。ただ、これらの問題はあくまでも一過性であり、右肩成長を阻害するような要因には、決してならないと思います。


勢いが増す中古車輸出23~25年の台数実績&予測及び地域別割合の推移


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出所:財務省貿易統計


23年は実績。24年は11月までの実績を元に自流研独自の予測。25年はあくまでも自流研の予測。


ここがPOINT!


 改めて、24年は大きな阻害要因があったにも関わらず、史上最高レベルの実績を残したことに、中古車輸出の強い成長性を感じます。これは、この連載で過去再三述べていますが、“メードインジャパン”で“ユーズドインジャパン“の中古車が、どこの国の中古車と比較しても優位性があることを示しています。25年は、さらなる飛躍が期待でき、今後も右肩上がりの成長が長期的に続くと、改めて確信する一年になるでしょう。


2025年2月号

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