ダイハツ・ミゼット②【思い出の車列伝】
- info-am
- 8月21日
- 読了時間: 5分

働く車のエースは、
個性第一の車に変貌
●ダイハツ・ミゼット
戦後の日本復興を支えたミゼットは、
販売終了から24年後、
個性的な装いでミゼットⅡとして再登場。
カーゴも加えて一世を風靡したこの車を
モータージャーナリストが解説します。
Text : Koichiro Okamoto(Motor Journalist)
復興とモータリゼーションを
陰で支えた軽3輪の象徴
大戦後の復興期に、「街のヘリコプター」というキャッチーなコピーを掲げて1957年に登場したダイハツ・ミゼットは、小型で低価格で積載性に優れることから大ヒットした。
ミゼットの成功を受けて三菱やマツダらも参入し、様々な仕様の軽3輪トラックが街中を走り回る光景が見られたという。
ところが、3輪である宿命で操縦安定性に難があったことからブームは長く続かず、60年代になると4輪が好まれるようになり、70年代初頭には軽3輪トラックはほとんど姿を消した。そんな中で唯一ミゼットだけが72年まで販売が続けられた。
軽3輪ブームが終焉を迎えても、戦後の日本のモータリゼーションを加速させ、高度経済成長期の日本のまさしく足元を支えた軽3輪トラックを象徴する存在として、ミゼットは広く知られ、当時を知る多くの人々の記憶に刻まれている。
そんな往年のミゼットの販売終了から24年が経った96年4月、その名を受け継ぐ小型トラック ミゼットⅡが登場した。
外寸は全長2790㎜×全幅1295㎜×全高1650㎜と当時の一般的な軽自動車よりもはるかに短くて幅もスリムなのだが、実はこのサイズ感は3輪の初代ミゼットに近いものだ。ホイールベースも1840㎜と短く、最小回転半径が3・6mと非常に小回りが利いた。
見てのとおり3輪ではなく4輪となり、フロントタイヤを収めたオーバーフェンダーの上に左右独立した丸目のヘッドライトを配し、真ん中にスペアタイヤを置いたスタイリングはユニークそのものだ。
小さなフロントウインドウにワイパーは1本のみ。当初は1人乗りで座席の左側にフロアシフトがあったが、ドアは左右にどちらからでも乗り降りできた。
MTだけでなくATも選べ
2人乗りやカーゴもそろった
メカニズム的には既存の軽商用バンであるハイゼットのものをうまく流用し、レッキとした軽トラックとして仕立てられていた。運転席下に搭載した直3SOHCエンジンに4速MTを組み合わせ、極端に短いプロペラシャフトとデフを介して後輪を駆動する、フロントミッドシップのFRレイアウトだ。
ただし荷台のサイズは小さく、積載量も150㎏と商売に使うには事欠くものだったのは否めないが、往年のミゼットのような〝働く車〟よりもパイクカー的に受け取られ、コミューターやカスタムベースとして愛用するユーザーも多かった。
97年10月には3速ATをコラムシフト化して生じたスペースに補助席を設けた2人乗り仕様と、荷台をパネルで覆った「カーゴ」が新設定された。これにより既存のトラックタイプを「ピック」と呼ぶようになった。
また、その際に特別仕様車として設定された上級仕様の「カスタム」が約1年後にカタログモデルとなり、一部を除いてエアコンが全車に標準装備された。
さらに、98年の軽自動車規格の改定および衝突安全基準の強化を受けて、約1年後の99年10月にはそれらへの適合を図ったマイナーチェンジを実施した。このときエンジンの変更およびギア比のハイギアード化により燃費も改善された。
そんなミゼットⅡは数を稼ぐクルマでこそなかったが話題性は高く、惜しまれつつ2001年に生産が終了した。
廃番となってからはカスタム派だけでなく、小さくて軽くて何より後輪駆動であることが受けて、一部の林道を攻めるようなユーザーからもてはやされるようになったのは意外だった。
その後、2017年の東京モーターショーに出品されたコンセプトカー「DN PRO CARGO」がミゼットⅢなのでは? と話題となって以降、情報は音沙汰がないのだが、今年秋のモビリティショーあたりで何か出てきそうな予感…!?
モータージャーナリストの視点!
極めてマニアックな往年のミゼットからすると、ミゼットⅡはずっと現実的な存在といえるが、やはり希少価値があることには違いなく、新車価格が50万円前後~だったことを思うとかなり高値の相場となっている。カスタマイズされたものが多く見受けられるが、年式のわりに走行距離が少ない個体が多く、トラブルがあっても比較的簡単に対応できるのも強みとなる。こうした個性的なクルマは旧くて希少価値が高いほど高値となるが、200万円を超える個体も珍しくない往年のミゼットと同様に、ミゼットⅡも時間がたつほど相場が上がっていくことが予想される。
各世代のウリはここだ!
ダイハツ・ミゼットの変遷
●初代
(1957年~1972年)

オート3輪ブームの立役者
● 空冷2サイクル単気筒エンジン
● バーハンドル→丸ハンドル
● 1人乗り→2人乗り

当初は1人乗りのバーハンドル、屋根と背面は幌でドアも付いていなかったが、1959年より、キャビンを備えて丸ハンドルに改め、セパレートシートを装備して2人乗車が可能になった。
中古車小売り価格帯 180万円~210万円 |
●ミゼットⅡ (1996年~2001年)

当初は軽トラックの1人乗りのみ
● 直列3気筒SOHCエンジン
● 当初の助手席側の窓は非開閉式
● 廉価グレードのBタイプも設定

助手席側には窓の開閉用のハンドルはない。1人乗りモデルでもトランスミッション関連部品の改造により、変速レバーのコラムシフト化など自分仕様のカスタムの幅が広い車種だった。
中古車小売り価格帯 50万円~130万円 |
●ミゼットⅡカーゴ
(1997年~2001年)

密閉型の荷室を備えたバン
● 前期型の終盤に追加
● ひと回り大きなボディサイズ
● 左右に窓のある荷室

荷室は雨風を防げるため、花屋や酒屋などの小口配送に最適だといわれた。さらに左右の窓が開閉可能で、荷物の出し入れがしやすい設計だった。最小回転半径3.6mで狭い路地もスイスイ。
中古車小売り価格帯 70万円~150万円 |
Photo by Ford Motor Company
オークマン2025年9月号掲載記事













